2020 Fiscal Year Research-status Report
The influence of childhood socioeconomic status and current economic condition on reproductive strategies: A life history perspective.
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20K03316
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
樋口 収 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (50625879)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生活史論 / 幼少期の社会経済的地位 / 少子化 / 晩婚化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,生活史理論の観点から,晩婚化・少子化の心理的基盤を探ることである。こうした研究は,晩婚化・少子化を改善する政策を考える上で有用である。 2020年度はGriskevicius et al. (2011)の研究に基づき,幼少期の社会経済的地位と現在の経済状況によって結婚願望が異なるかどうか--すなわち,経済状況が悪化すると,幼少期の社会経済的地位が高いほど結婚願望が低下するかどうか--を検討することであった。 この仮説を検討するため,経済状況を操作した実験と,経済状況を主観的に尋ねた調査をそれぞれ実施した。経済状況は乱文再構成課題や文章提示によっておこなった。また,実験・調査は,学生や一般市民を対象に複数おこなった。 その結果,大学生を対象とした一部の実験で仮説を支持する結果が得られ,不況条件下では幼少期の社会経済的地位の効果が有意で,幼少期の社会経済的地位が高い人ほど,結婚願望が低くなっていた。ただし,一部の実験およびWeb調査では仮説を支持する結果は得られなかった。特に,一般市民を対象にしたWeb調査では,調査を実施した2回とも仮説は支持されなかった。一般市民を対象にした調査で仮説を支持する結果が得られなかった理由として,まず,経済状況を主観的回答で求めたために,その心理的インパクトが弱かった可能性が考えられる。そのため,経済状況を操作した実験を実施してこの点については確認する必要がある。あるいは,回答者の置かれた立場(例えば,付き合っている相手がいるかどうか)などが判断に影響を及ぼしていた可能性も否定できない。そのため,そうした変数を統制できるような調査設計をして再検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はコロナ禍で,対面での個別実験が実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も対面での実験実施が困難であると予想されるため,Webでの実験実施を検討する。2020年度に実施したWeb調査では,経済状況の主観的な回答で分析したが,それらの調査では仮説は支持されなかった。2021年度は,経済状況を操作した実験を実施し,改めて仮説を検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナのため,国内・海外学会に参加できず,旅費を執行しなかった。また,予定していた対面での個別実験も実施できなかったため,人件費・謝金も執行しなかった。 2021年度の状況は現時点で2020年度と変わらないと思われるが,対面実験からWeb実験にシフトすることで,確実に研究を遂行する予定である。
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