2021 Fiscal Year Research-status Report
潜在意識-顕在意識指標の並立測定システムの構築と近隣国への排外主義の多層性検証
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20K03319
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
潮村 公弘 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (20250649)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 潜在意識測定 / IAT |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、まず最初に、IAT(Implicit Association Test)技法を活用した「新規なデータ収集システム」のローンチに集中的に取り組んだ。この新しいデータ収集システムは、質問紙や調査票を用いて自記式調査の方法でデータ収集を行う「顕在意識指標」の測定と、IAT技法を活用した「潜在意識指標」の測定とをシームレスに行うことを可能とするシステムである。 2020年度末の時点で、データ収集システムの開発は「試行的な実施での遂行確認」を行える段階まで進展していたものを、2021年7月に「データ収集システムのローンチ」にまでこぎ着けることができた。この時点において、広く一般に(publicに)公開を行いながらデータ収集を行う8つの公開版IAT課題と、特定研究用に限られた回答者だけを対象にデータ収集を行う1つの非公開版IAT課題でのデータ収集を開始することができた。 2021年7月のシステム・ローンチ以降は、順調にデータ収集が進んでおり、これまでは様々な対象についての日本での潜在的態度(アンコンシャス・バイアス)に関して、基礎的かつ幅広く実証的なデータ収集が行われてきたことは無かったことに対して、日本での基礎的なデータを提供することができるようになって来ている。現在は、基礎的データの公開、ならびに論文執筆に向けて準備を進めている段階である。 2021年7月以降のデータ収集においては、2つの進展が見られた。1点目は、非公開版IAT課題を、試行的な課題も含めて4課題にまで拡張することができた。2点目は、新規のIAT課題を追加していくさいに(システムエンジニアの手を借りることなく)研究者自身の手で課題(タスク)を追加していくことが安定的に行えるようにするためにシステムやマニュアルの改善を行った点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度末時点での見通しでは、「2021年度の前半」にシステムのローンチを計画していたところ、2021年度に入ってからは極めて順調にローンチに向けた準備が進展し、当初の想定よりも早く、2021年7月にIAT(Implicit Association Test)技法を活用した「新規なデータ収集システムのローンチ」を迎えることができた。 その一方で、「直接接触(法)」を採用することで、潜在意識レベルと顕在意識レベルの双方において「直接接触」がどの意識レベルにまでどのような影響を及ぼすのかを検証するための「プレテスト」の実施については、新型コロナウイルスの感染拡大という社会情勢下においては断念せざるを得なかった。ただし、潜在意識レベルの測定と顕在意識レベルの測定の連携については順調に準備が進んでいる。双方の測定をウェブサイト上で行うことによって、コロナ禍で心理学的な実験研究等の実施について制約がある中においても研究遂行ができる準備が整っており、今後のデータ収集は順調に進行するものと期待できる。 このような全体的な状況に対して、「おおむね順調に進展している」という評価としている理由は、「データ収集システム」の開発ならびにローンチが本研究プロジェクトにおいて占めているウェイトがかなり大きいためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度末までに、IAT技法を活用した「新規なデータ収集システム」の開発ならびにシステムのローンチを行い、今後の持続的で安定的な運用の見通しを得ることができた。他にはないこのデータ収集システムを活用していくことで、近隣国との多国間関係に関わる認識に関して、1)「IAT技法を用いて測定した潜在意識指標」と、2)「伝統的な尺度構成法を用いて測定した顕在意識指標」という2段階の意識レベルを統合的に捉えるという本研究の遂行目標を実現していく。 さらには、偏見・バイアス低減のための方策として世界中で最も幅広く研究が行われてきた手法(研究アイディア)である「直接接触(法)」を取り入れていく。そのさい、現代においては「直接接触(法)」の範疇が拡大していることに着目して、「直接接触(法)」を研究に取り入れていく。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、まさしく直接に触れ合う方法を用いることには制約がつきまとうが、技術革新の進展もあって、厳密にはバーチャルで接触を行うことも、主観的には直接的な接触と境界のないものとなって来ていることに注目する。 残りの2年間の研究期間で、広義の「直接接触(法)」を活用しながら、サーベイ調査(プリテスト研究を含む)と実験研究とを有機的に関連づけながら進めることで、「直接接触(法)」の有効性(すなわち、効果の大きさ)と、影響範囲(どの意識レベルにまで影響が及ぶのか)について実証的に検討を進める。その知見を基に、近隣国との多国間関係に関わる認識を改善するための関係改善施策の提言まで進め、多文化社会への進展に対して貢献を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度末に、5,400円の次年度使用額が生じた。このようにかなり少額の次年度使用額が生じたのみであったことは、全体的には極めて予算額に沿った想定通りの執行ができたものと考えている。なお、この5,400円の次年度使用額は、2022年度分の研究遂行費に充当される。
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