2023 Fiscal Year Research-status Report
The carryover hypothesis of cooperative behaviour in cultural group selection theory
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20K03323
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
中西 大輔 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (30368766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 裕美 北海学園大学, 経営学部, 講師 (70848853)
井川 純一 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (90748401)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 多数派同調バイアス / 社会的ジレンマ |
Outline of Annual Research Achievements |
情報獲得の領域で適応的であることが示されている多数派同調バイアス (Henrich & Boyd, 1998; Kameda & Nakanishi, 2002) が集団内協力の文脈 (社会的ジレンマ状況) にもキャリーオーバーされるかどうかを確認するための実験を行った。日常的な社会的ジレンマ状況を場面想定法実験で示して他者の行動に同調するかどうかを検討した実験では、多数派同調バイアスは全く示されなかった。この成果については、Letters on Evolutionary Behavioral Science誌に掲載された ("Can conformity bias transcend domain specificity under social dilemma situations?", Natsumeda et al, 2003)。続いて、社会的ジレンマの実験状況を場面想定法により示した2回の実験では、いずれも多数派同調バイアスが観察された (中国四国心理学会、日本人間行動進化学会で発表。論文準備中)。協力の領域でもバイアスが観察される場合とされない場合があったことが分かったが、なぜそのような違いが見られたかについては、現在考察中である。また、今年度は多数派同調傾向を規範的影響、情報的影響の2つの動機の観点から測定する同調志向尺度 (横田・中西, 2011) の改訂も進めており、東北学院大学の学生とクラウドワーカーを対象にした調査を行った。特に信頼性・妥当性の高い情報的影響の下位尺度があれば、様々な社会行動との関連を検討することができる。今年度は尺度を完成させて論文投稿を目指したい。情報獲得領域での多数派同調バイアスに関する研究では心理学研究に論文が1本掲載された (藤川他, 2023)。情報獲得領域における多数派同調バイアスについては、場面想定法ではなく、正解に対して報酬を支払う行動実験を行い、この実験でもその存在が示された (学会発表、論文準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多数派同調バイアスが社会的ジレンマ状況にキャリーオーバーされるかどうかを明らかにするための実験をこれまで3回行い、うち2回で仮説が支持されている。また、同調傾向を測定するための尺度開発も概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は情報獲得領域における多数派同調バイアスに関する実験データについて査読論文を1本投稿予定である。また、協力領域で多数派同調バイアスが観察された2つの実験についても現在論文を準備中であり、年度内に投稿予定である。引き続き、協力の領域で多数派同調バイアスを人々が示すかどうか、場面想定法ではなく、行動実験での検証を検討したい。行動実験については、学内の実験参加者プールが十分ではないため、クラウドワーカーを対象としたインターネット実験も検討している。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験が、実験参加者プールの不足から所属大学での実施が難しいことが判明し、クラウドワーカーを対象としたインターネット実験の実施が必要になり、研究実施計画が若干遅れたため。また、多数派同調傾向を質問紙で測定する同調志向尺度の開発も年度内に完了しなかった。これは下位尺度の情報的影響を測定する項目の信頼性係数が十分高いものがなかなか作成できなかったためである。次年度使用額は、協力領域で多数派同調バイアスを測定する実験と、同調志向尺度開発のための調査にあてる予定である。
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