2020 Fiscal Year Research-status Report
再評価の多様性に着目した感情コントロールのための教材開発
Project/Area Number |
20K03330
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
及川 恵 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60412095)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 再評価 / 感情コントロール |
Outline of Annual Research Achievements |
再評価は感情を変えるために考え方を変える感情制御方略である。再評価は適応的な感情制御方略とされているが、近年、再評価には複数の下位方略があることが指摘されている。再評価の効果的活用を促進するためには、日常における再評価の多様性を踏まえた検討が不可欠である。本研究では、日常での多様な再評価の下位方略を測定する尺度を開発し、再評価の多様性という観点から再評価の有効性に関連する要因を解明する。最終的に日常での多面的な再評価を促す教材開発を行うことを目的とする。 本年度は、再評価の下位方略に関する先行研究の分類を基に概念整理を行い、下位方略の多様性を把握する尺度を開発することを課題とした。まず、先行研究を基に8つの下位方略について構成概念の定義と対応する項目を用意し、質問紙調査を実施した。分析の結果、8因子を想定することは妥当であり、各下位尺度の信頼性にも問題がないことが確認された。また、下位尺度間や関連尺度との相関から、各下位方略の特徴について検討した。最終的に8因子32項目からなる多面的再評価尺度が開発された。次に、大学生および社会人を対象に調査を行った結果、本研究で開発した多面的再評価尺度の信頼性と妥当性が確認された。これまで、再評価の下位方略については実験による検討が多く、少数の下位方略の比較に留まっていた。本研究で開発した尺度は、比較的少ない項目で多様な下位方略を測定できる点で有用性が高く、感情制御研究における新たな知見の提供に役立つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は再評価の多様な下位方略を測定する尺度を開発することを課題とした。大学生および社会人を対象に調査を行った結果、想定した因子構造が妥当であり、尺度の信頼性および妥当性も確認された。尺度の開発という当初の目標に達したため、進捗状況はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に開発した尺度を用い、ストレス場面における各下位方略と感情状態との関連を検討し、各下位方略の効果や組み合わせの効果について明らかにする。調査については、データ収集が困難である場合にはオンライン調査を利用する。 最終年度には、二年目までの基礎研究を基に、再評価の活用に関する心理教育と多面的な再評価を促すワークからなる教材を開発し、教材実施前後の適応指標の変化から教材の効果を検討する。得られた示唆に基づき教材を洗練させると共に、異なる対象層で実施する場合を想定し、応用可能性を高めるための検討を行う。 各年度において、研究成果を学会や学術雑誌等で逐次発表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、本年度は新型コロナウイルスの影響のために学会の開催が延期され、旅費を使用しなかったことや、大学での謝金による業務依頼をしにくい状況であったことが挙げられる。 次年度の使用計画について、新型コロナウイルスの影響が続いており、データ収集が困難となるとが予想されるため、オンライン調査を行う際の費用とすることを予定している。また、本年度の成果を国内外の雑誌や学会で発表するために校閲費等、投稿にかかる費用に使用する予定である。
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