2020 Fiscal Year Research-status Report
展望的記憶課題の意図存在要素における加齢変化の実験的検討
Project/Area Number |
20K03343
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
森田 泰介 東京理科大学, 理学部第二部, 教授 (10425142)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 記憶 / 展望的記憶 / し忘れ / 意図 / 意図状態 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
未来において行うべき行為を記憶し,それを適切な時機に想起・実行することが求められる課題のことを展望的記憶課題と呼ぶ。薬の飲み忘れ,ドアの鍵のかけ忘れ,書類の提出し忘れなどは,展望的記憶課題の失敗と位置づけることができる。展望的記憶課題の失敗は我々が健康で安全な生活を,他者との良好な関係を維持しながら自律的におくるために重要なものであることから,展望的記憶課題の失敗防止に資する知見を蓄積することは重要な研究課題である。本研究では展望的記憶課題の失敗に関わるメカニズムとして意図存在要素に着目し,その主要な特性の実証的解明と理論的検討を行うことを目的としている。2020年度には新型コロナウイルス感染拡大防止を重視して対面による実験ではなくオンライン事態における実験を行い,展望的記憶課題の意図存在要素の規定因や加齢変化の解明および展望的記憶課題の意図存在要素の機能の探索的検討を行った。その結果,展望的記憶課題の実現可能性や自己にとっての重要度,他者にとっての重要度などの属性が意図存在要素の規定因であること,ただし意図存在要素のなかでも実現可能性の影響を受けやすいものと受けにくいものがあることなどが明らかになった。例えば他者にとっての重要度は,意図存在要素のうち,義務に関わる要素には関係するが,意志に関わる要素との間には有意な関係が見られないことが示された。これらの成果については61st annual meeting of the Psychonomic Societyや日本認知心理学会第18回大会などで発表し,論文を現在学会誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
展望的記憶課題の意図存在要素の規定因や加齢変化の解明については,展望的記憶課題の実現可能性が関わっていることや,意図存在要素のなかでも実現可能性が関わる部分と関わらない部分があることなど,一定の成果が得られている。特に展望的記憶課題の意図存在要素のあり方の測定法については大きな進展が見られており,意図存在要素の複数の側面を簡便に測定できるものが開発されている。その成果は複数の学会において発表し,また,論文としてまとめ,現在は査読を受けているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
展望的記憶課題の意図存在要素のあり方について多面的に測定する手法が開発されたことから,その手法を用いて展望的記憶課題の意図存在要素の規定因や機能の検討に取り組む。特に,意図存在表象のいずれの側面が,展望的記憶課題遂行のための記憶方略の使用と関連するのかに焦点を当てる。検討の際には,新型コロナウイルス感染状況を見極めながら,感染拡大につながることのない最適な方法を採用するように留意する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため国内・海外における学会に参加することができなくなったこと,対面による実験を安全に実施することが難しくなったことから,次年度使用額が発生している。翌年度に新型コロナウイルス感染症が収束した場合には,国内・海外における学会に参加し,また,対面による実験を行う。そのための旅費や人件費として,助成金を使用する予定である。
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