2021 Fiscal Year Research-status Report
Collaboration in Schools: Social Power derived from Social Identity
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20K03351
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Research Institution | Shujitsu Junior College |
Principal Investigator |
鎌田 雅史 就実短期大学, 幼児教育学科, 准教授 (10610040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三沢 良 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (90570820)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会的勢力 / 教員の自律性 / 協働 / 学校組織 / 専門的な学習コミュニティ / 分散型リーダーシップ / 組織文化 / 教師アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,ソーシャルシステム論(Hoy, 2013)を基に学校組織構造を検討し,構造的システム,文化的システム,個人的システム,政争的システムの調和と,教員の自律性の役割について検討を行った。教員の自律性は個人的システムに位置づけられる。自律性が他のシステムと調和するならば,構造的システムに柔軟性を与え,文化的システムを再生産し,またそれによって下支えされると考えられる。反対に不調和ならば,政争的システムを非建設的な方向へ活性化し得ることが懸念される。(鎌田雅史 (2022) 学校組織における教員の自律性の役割 就実教育実践研究, 15, 147-160)。 さらに,教師の自律性と校内コミュニティの関係性に関する調査を実施した。正統的周辺参加理論の枠組みから,校内コミュニティへの参加は教師の価値観や態度を再生産する可能性が示唆される。規範の内面化は,教師アイデンティティや学校組織コミットメントの醸成とも関連することが示唆されるまたHonneth(2012)より,校内コミュニティから配慮され・承認され・必要とされていると認識した教師はより自発的であると予測した。900名の現役教員を対象としたインターネット調査により,校内コュニティにおける教授・学習に向けた文化的規範が,教員の校内コミュニティへの参加を仲介して,学校業務に対する自発的態度および行動を説明する効果が示された。 伝統的協働論において,公式的組織における重要な要素として,1)共通目的,2)コミュニケーション,3)共同意思が指摘されている(Barnad,1938)。教員の自発的行動が学校のテクニカルコアである教授・学習に方向性づけられ束ねられるのであれば,それは協働的な調和の重要な要因となり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の中核的概念である社会的勢力理論と学校教員の自律性との関係について理論的に知見を整理するために,展望研究を行った。その成果は,『鎌田雅史 (2022)学校組織における教員の自律性の役割 就実教育実践研究, 15, 147-160』にて公表している。 また,2020年度に実施したオンライン調査の中間分析結果については,協働研究者である三沢良氏と連名で,日本教育心理学会第64回総会にて発表を行った(『鎌田雅史・三沢良(2021) .学校組織における分散型リーダーシップと教員の業務改善 校長によるエンパワーメントの調整効果 日本教育心理学会第64回総会』)。同発表においては,組織文化としての分散型リーダーシップが教員の働きやすさ向上のための業務改善に向けた取り組みに及ぼす効果及び,その効果を校長によるエンパワーメント(エンパワリングリーダーシップ)が下支えする可能性について提唱した。 2022年2月には,現役の教員900名(小学校300名,中学校300名,高校300名)を対象としたWeb調査を行った。この調査は,2021年度に実施した理論研究を基礎とし,学校を一つのコミュニティと考え,教師とコミュニティの互恵的な関係が,教師が自律的に活動するための重要な要因んであることを明らかにするために実施した。教授・学習に向けた校内コミュニティの規範は,そのコミュニティから得られる配慮,尊重,社会的自尊感情を仲介して,教師の自律的態度や自律的行動(OCB)を説明する可能性が示唆された。結果の一部については,2022年度の教育心理学会で発表予定である。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて,学校を対象としたマルチレベルモデルに基づくアンケート調査は十分に行えておらず,オンライン調査にとどまっているなど,やや進行が遅れている。今後,社会情勢を踏まえながら研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,2022年2月に実施した,オンライン調査によって得られたデータの分析および成果発表を行う予定である。本調査は,2021年度に実施した理論研究に基づきデザインされたものである。本研究では,多様な形態をとり得る教員の協働の中でも,教員の自律的な参加・貢献の調和に注目している。Renger, Renger, Miche, & Simon(2017)や,Honneth(2012)の議論を基に,学校において教員が自律的に職務に取り組み組織貢献していくための,校内コミュニティと個々の教員の互恵的な関係性に着目する必要があると考えた。また周辺的正当参加理論が提唱するように,校内コミュニティの中で共有されているインフォーマルな文化的規範は,コミュニティと教員の相互的な関わりの中で内面化・再生産される可能性に着目し,学校教育のコアテクノロジーでもある教授・学習に焦点化しているコミュニティにおいて,教員自身がコミュニティから配慮され・承認され・必要とされていると認識した場合に,より自律的な組織貢献に対する態度・行動が生起するのではないかという仮説のもとで検討を試みた。分析の中間発表については,2022年度に開催される日本教育心理学会第64回総会で行う予定である。 また同調査に基づき,校内コミュニティが内面化されるプロセスについてより踏み込んだ分析を実施する予定である。特に,教師アイデンティティの形成や,学校組織にたいするコミットメントの醸成との関連性に関して,さらなる検討を行う。 当初,2022年度にはマルチレベルモデルに基づいた学校を対象とした郵送法基づく調査を予定していたが新型コロナウイルスの蔓延に伴い,現在計画を保留している。調査をどのような形で進めるのかについては,社会情勢を鑑みて慎重に検討していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延に伴い,学会への参加を十分にすることができなかった。また,研究会等もオンライン開催となったため旅費を執行していない。勤務校の業務もイレギュラーなものが多くなり,当初計画しているよりも研究活動に割り当てる労力が不足している部分もあり。研究全体の進行もやや遅延している。社会情勢を鑑み,郵送調査の実施を見送ったため,これらの予算も未執行である。 本研究は,通常時の学校における教員の協働を想定しているため,研究期間の延長も視野にいれながら社会的な情勢に動向留意しながら今後の調査計画を再検討する予定である。
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Research Products
(2 results)