2023 Fiscal Year Research-status Report
Collaboration in Schools: Social Power derived from Social Identity
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20K03351
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Research Institution | Shujitsu Junior College |
Principal Investigator |
鎌田 雅史 就実短期大学, 幼児教育学科, 准教授 (10610040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三沢 良 岡山大学, 学術研究院教育学域, 准教授 (90570820)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 分散型リーダーシップ / 教員の自律性 / 専門的学習コミュニティ / エンパワリングリーダーシップ / 社会的勢力 / 学習メタファー / 教師の職能発達 / 学校文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究に関連して,2023年度は1回のインターネット調査を実施した。また3件の学会発表(日本教育心理学会(2),日本学校心理士会(1)),1編の紀要論文(就実論叢)および1編の学会誌(日本学校改善学会)において成果発表を行った。 学会発表においては,2022年度に実施したオンライン調査の分析に基づくもので,教員が自律的に活動するため学校文化を問うものである。教員間が分散型リーダーシップを発揮している学校文化においては,校長のエンパ―ワリングリーダーシップを知覚した教員の自律性に関連した諸認知(内的統制,教職コミットメント,自発性)は増加する傾向が認められる。一方,協働的な素地が知覚しにくい学校文化においては,エンパ―ワリングリーダーシップは,場合によっては教員の依存性を高める可能性が示唆された。 さらに,学校文化(専門的学習コミュニティ)の醸成に関連し,教員の学びを模索するための文献展望を行った。その結果,体系的な学びに関するメタファーは①獲得メタファー,②参加メタファー,③知識創造メタファーに基づいて記述されていることが確認でき,これらは互いに相補的な学びの側面を表現するものであることが示された。制度化された学校教育における「学び」のイメージが,安定性と効率を指向する獲得メタファーに基づく傾向が強い一方で,創造性や自律性と関連する参加メタファーや知識創造メタファーに基づく学習観が十分に考慮されていない可能性が示唆された。教員の自律性や,学びあう関係性を担保するためには,試行錯誤が許容される文化,参加と承認に基づく関係性を見直す必要性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では本研究プロジェクトは,2020-2023年度の予定であったが,2019からのCOVID-19の感染拡大に伴う社会的影響によって研究が遅れたため1年間の延長をすることとなった。昨年度実施したオンライン調査サービスで,本研究で予定していたデータはおおよそ取得し終えたため,本年度は研究成果の公表に注力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,昨年度までに取得した研究データの分析を行い,その成果を公表することに注力したい。特に本研究の中核的なテーマである社会的勢力(Social Power)に関連して,これまで社会的承認や,自律性,エンパワーメントなど関連する変数との関連を検証することを通して間接的に検討してきたが,Power Enabling(可能にする力, Baarle et. al., 2024)という概念に基づき,公式的組織における権限役割(Formal Power)と教員集団のネットワークから発生するインフォーマルな影響力(Informal Power)について理論的な統合と知見の整理を目指す。現在のところ,著書の分担執筆を1つ,学会での成果公表を1つ予定している。また,紀要原稿を執筆する予定である。また,1つのデータについて学会誌への投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
本研究プロジェクトは,COVID-19によるパンデミックの影響で,2020-2022年まで当初予定していた研究会および学会のための研究旅費は執行されなかった。また同様の理由から,郵送調査をオンライン調査に代替した関係で,調査にかかる予算も少なくなっている。 研究の進行もやや遅れたため,期間を1年間延長することとしたため,本年度の研究活動に必要予算を保持している。なお2023年は,旅費等で余った予算の一部を使用することで,追加のオンライン調査を行うことができ時系列的なデータを取得できた。本年は,研究成果発表が中心となるため,旅費や成果公表費を中心に支出していきたい。
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