2020 Fiscal Year Research-status Report
協同的な推敲活動におけるピアの匿名性および識別性の効果に関する教育心理学的研究
Project/Area Number |
20K03356
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
深谷 優子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (00374877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 洋子 千葉工業大学, 創造工学部, 助教 (70406651)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 協同 / 作文 / 筆名 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ピアレビュー方式の協同的な推敲活動を行う際にピアとの関係性悪化を懸念する書き手がいることに着目し,書き手が用いる筆名の匿名性と識別性の程度を操作し,それが協同的な推敲活動および書き手の思考態度に与える影響を解明することを目的とする。そのため5年の研究期間で1) ピアの匿名性および識別性の程度が書き手の推敲および思考態度に及ぼす影響の解明,2) 協同的な推敲活動において書き手にとって不安や懸念を低減する条件の特定,3) 1)および2)の成果に基づき,書き手の不安・懸念を低減した,より効果的な読解力育成および作文支援としての協同的な推敲活動のプログラムの開発,の研究を行う予定である。 令和2年度は,上の1)について研究を進め,ピアレビュー方式の協同的な推敲活動を行う際に参加者の筆名の匿名性と識別性の程度を操作し,その影響についてデータを収集した。大学生を対象とし,筆名として,指定された数字/任意の数字/任意の数字と単語,のいずれかの条件に割り当てた。その結果,いずれの筆名の条件においても,参加者は実名よりも作文やコメントがしやすかったと評価していた。また,自由記述より,筆名を用いることで,ピア(の名前)ではなく,コメントや作文の内容により集中できたことが示唆された。これらの結果より,筆名の匿名性と識別性が,参加者の意欲や活動に与えることが示唆される。本年度収集したデータは,令和3年度に更なる分析と発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集はおおむね計画通りに進められた。ただし,コロナ禍で対面での打ち合わせ等が制限されたため,収集したデータの分析や発表については一部次年度に持ち越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,ピアレビュー方式(peer-review style)の協同的な推敲活動を行う際に,ピアとの関係性悪化を懸念する参加者が一定多数いることに着目し,1) ピアの匿名性および識別性の程度が書き手の推敲および思考態度(mindset)に及ぼす影響の解明,2) 協同的な推敲活動において書き手にとって不安や懸念を低減する条件の特定,3) 1)および2)の成果を踏まえ,書き手の不安や懸念を低減した,より効果的な読解力育成および作文支援としての協同的な推敲活動のプログラムの開発,を目的とするものである。 これまでに,1)について,大学生を対象として筆名の条件により匿名性と識別性の程度を操作し,それが協同的な推敲活動および書き手としての思考態度に及ぼす影響についてのデータを収集していることから,この分析をさらに進め,2)について筆名の匿名性と識別性の程度の違いが,作文・推敲における書き手の不安や懸念にどのように影響するのかの実証的な検討を進める。加えて,文献研究も行い,協同的な推敲活動における書き手の不安・懸念に関連する要因およびその低減のための要件・条件を検討し,3)のプログラム開発につなげる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で対面での打ち合わせ等が制限されたため,収集したデータの分析や検討が十分に行えず,収集したデータの分析の一部及びその結果の発表については次年度に持ち越すこととなったため。
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