2022 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児期における低線量汚染地域での生活が子どもの社会的情動性の発達に及ぼす影響
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20K03358
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
筒井 雄二 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70286243)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原子力災害 / 心理的影響 / 放射線不安 / 発達 / 社会情動性 / 内在化問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の概要】福島原発事故は,福島で暮らす母子に放射線への不安や強いストレスなど,心理学的にネガティブな影響を今も与えている可能性が高いといわれています。本研究では,原発事故当時,福島で暮らしていた子どもたちに心の発達や多動性障害の問題が増えているという可能性を,科学的調査により明らかにすることを第1の目的として行っています。また,第2の目的として,原発事故によって引き起こされた子どもの心の発達や多動性障害がどのような心理学的メカニズムによって引き起こされているのかについて検討します。 【令和4年度における研究】令和3年度は,原発事故から3年が経過した2014年に我々が福島県内で行った調査に協力してくれた,当時生後4か月,18か月,42か月の乳幼児およびその母親を対象に,事故から10年後の彼らの社会情動性の発達の状況を調べました。令和4年度は,令和3年度に実施した調査データを分析した上で,その結果に基づいて同様の調査を行いましたが,調査対象者を広げ,福島市内の小学校に通っている児童732人と彼らの母親に調査に協力してもらいました。また,福島県以外の地域に居住している母子356組にも調査に協力してもらい,対照群として分析に利用しました。質問紙では母子の原発事故に関連するとみられる精神症状や,母親の放射線防御反応,子どものエフォートフルコントロール,多動や問題行動について質問しました。本研究の結果,原発事故当時,福島県内で暮らしていた子どもたちは他県の子どもたちに比べて不安,抑うつ,その他の心身症状など,いわゆる内在化問題行動を多く示すことがわかりました。原発事故が子どもたちの行動発達的側面に良くない影響を与えている可能性を本研究は示唆していると考えられます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19によるパンデミックの影響禍で,原発事故に関連する心理学的影響について調査を行うことは非常に難しいと考えました。そこで,本来は令和2年度に実施する予定であった調査の実施を1年延期し,令和3年度に実施したことから,当初予定していたすべての研究計画を1年ずつ送らせて実施しました。令和5年3月,日本政府によるコロナ感染症対策の見直しが行われ,パンデミックの影響はようやく下火になりつつあると考えられますが,上記のようにその間,心理学的調査の遂行は難しい状況が続いていたことが研究の遅れの直接的な原因だということができます。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年延期し了承を得られたことで,当初予定していたとおり,今回の研究データを発達心理学や社会心理学,精神医学の専門家とも共有し,これらの心理的問題のメカニズムや対処法について考察したいと考えています。同時に,原発事故が引き起こした長期にわたる心理学的問題について,今回の研究成果を中心に学会発表などを通じて海外の研究者にも周知する努力を行いたいと考えています。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」でも説明したように,研究を開始した令和2年度はCOVID-19によるパンデミックの影響が大きく,原発事故に関連する心理学的影響について調査を行うことは非常に困難な状況にありました。もしそのような状況の中で調査を行った場合に,人々が感じている何らかの心理学的な問題が,原発事故に起因しているものなのか,それともコロナウィルスの蔓延に起因するのかを判別することが難しく,調査を成功させることはできなかったであろうと考えています。それゆえコロナの感染状況を見守りながら研究を行ったために調査の進行が遅くなり,結果的には研究を1年延長する必要が生じました。次年度使用額が生じた理由はそのような原因によるものです。
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