2021 Fiscal Year Research-status Report
小中学校における「児童生徒の疑問に基づいた授業」の開発
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20K03359
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小山 義徳 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90546988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 朋世 千葉大学, 教育学部, 教授 (00341967)
藤川 大祐 千葉大学, 教育学部, 教授 (50288429)
高木 啓 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90379868)
道田 泰司 琉球大学, 教育学研究科, 教授 (40209797)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 探究学習 / 心理的安全性 / 問い / 質問 / 疑問 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、3つのことを実施した。まず、理論的枠組みとして「問い生成の認知・環境モデル」を構築した。児童生徒が「問い」を生成する際には、「認知要因」として、児童生徒の既有知識と授業で新たに教師が提示した知識の間に矛盾や対立点を知覚した際に「問い」が生成されると考えた。さらに、「環境要因」として、心理的安全性(「意義ある考えや疑問や懸念に関して率直に話しても大丈夫だと思える経験」(エドモンドソン(2021))が担保されないと、生成した問いが表出されることはないと考えた。 この「問い生成の認知・環境モデル」に基づき、小学校で1つ、中学校で1つの計2つの実践を行った。ます、小学校の実践においては「認知的不全感」と「疑問の数」、「心理的安全性」と「疑問数」に相関はなかったが、「意味理解志向」と「心理的安全性」、「疑問の数」の間に弱い相関があることを明らかにした。次に、中学校における実践においては、教師が生徒の「心理的安全性」をワークシートを用いて高めることと、生徒が生成する疑問の関係を検討した。その結果、短期的にワークシートを用いただけでは「心理的安全性」を高める効果は認められなかった。しかし、今回、実践を行ったクラスにおいては、実践を行った時点で「心理的安全性」が高く、天井効果が見られた。この点に関して、授業を担当した教諭が中学校1年時より行っている指導が生徒の「心理的安全性」と問いの生成や表出に影響していると考えられた。そのため、次年度において、長期的に教師のどのような指導が生徒の「心理的安全性」を高め、問いの生成や表出に影響しているのか検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた授業実践の中で、新型コロナウイルスの影響で学級閉鎖となり実施できなったものがあった。また、授業実践を行った結果、当初の仮説を支持する結果とはならなかった部分があり、計画よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
「問い生成の認知・環境モデル」に基づき、中学校の実践においては、長期的に教師が「心理的安全性」を高める実践を行うことが、生徒の疑問の生成と表出にいかに結びつくのか検討を行う。また、小学校における実践においては、児童が生成する疑問と、実際に周りの児童や教師に表出する疑問の違いを比較し、どのような児童が疑問を生成でき、その疑問を周りに表出できるのか検討を行う。また、「疑問生成」⇒「探究学習」と直線的に捉えるのではなく、「疑問生成」⇔「探究学習」と、お互いに影響し合う循環型のサイクルであると捉え、児童が作成した疑問を探究学習でどのように用いるかが、児童の疑問生成を促せる効果についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により、すべての学会や研究会がオンライン開催となり、当初予定していた旅費が使用できなかった。また、このことは、本研究の中心である、小学校や中学校における授業実践にも影響しており、新型コロナウイルスに起因する学級閉鎖等により、授業開発が計画通りに進んでいないことが理由として挙げられる。 R4年度の使用計画としては、新型コロナウイルスへの対応が、ある程度緩和されることが見込まれる。そのため、地方で開催される学会や研究会へ参加する際に旅費が必要となる。また、今年度はより多くの授業実践を行うことを計画しているため、それに伴う経費も必要となることが見込まれる。
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