2022 Fiscal Year Research-status Report
3相の「わかる」で構成する授業づくりプログラムの提案
Project/Area Number |
20K03371
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤田 敦 大分大学, 教育学部, 教授 (80253376)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 授業デザイン / 教員研修プログラム / 3相のわかる |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、児童生徒の「確かな学力」を支える「理解」を深めるための授業に求められる3相の「わかる」に注目し、それぞれの「わかる」活動を効果的に配置した授業デザイン(指導案・授業計画の立て方)を考案して、学校現場の教師のための授業づくりの研修プログラムを作成することを目的としている。この3相の「わかる」とは、①「基礎的な知識習得に必要な“判る”」、②「因果関係や仕組みの探究によって到達する“解る”」、③「主体的な知識の活用を生み出す“分る”」である。 2022年度の研究では、3相の「わかる」を踏まえた授業の考え方と実例を概説する教員研修を実施し、その効果や課題の整理を行った。今年度はA市教育委員会が主催する小中教諭を対象とした①5年経験者教員研修と②臨時講師研修の中で実施した。①は感染防止対策のため双方向型オンライン形式となったが、2021年度に作成したワークシート、チャット、アンケート機能を活用することで、3相の「わかる」の概念の基本的な理解を促す研修が実施可能であることを確認した。②は対面形式で、算数の一部の授業展開を立案する演習課題を含めた研修を実施した。3相の「わかる」の違いを学習者の学習活動の違いとして理解するためには②のような指導案作りの演習課題の必要性が示唆された。今年度の受講者の感想からは、前年度に実施した研修会よりも、3相の「わかる」の理解や、授業実践への導入意欲が高まったことが推察された。一方で、限られた時間内(約2時間程度の研修を1回のみ受講)の研修では不十分であり、継続的に研修を繰り返すことや授業づくりの考え方の理論的な学習と、学校現場での活用を高めるための実践を通した学習を往還するスタイルの研修プログラムを構築する必要性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、教育委員会等が主催する実際の教員研修会において研修プログラムを実施し、その効果や課題を検証する計画である。ただ、昨今のコロナ禍や学校現場の働き方改革推進の影響により、全国的に教員研修会を簡略化(時間短縮、リモートやオンデマンド形式)する傾向があり、当初計画していたような「理論の学習」、「指導案作りの演習」、「現場実践と省察」というサイクルを繰り返すタイプの研修会を実現できていない。この現状を踏まえながら、計画内容や方法を適宜変更し研究を継続しているところである。その中において、当初の目的とは異なるが、双方向のオンライン研修で活用できる教材の作成や、授業全体の指導案ではなく、授業の一部を切り取った指導場面を構成していく演習課題など、多様なスタイルの研修に活用できそうなプログラムの要素を考案するという成果は得られた。ただし、研修プログラム全体の完成には至らず、また、プログラムの効果検証に必要なデータの蓄積も不十分である。これらの点から、進捗状況は「遅れている」という判断をせざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで研究フィールドとしていた教育委員会等による公的な研修(法定研修)は、2023年度も簡略化される予定のため、オンライン形式や短時間の研修を前提とするプログラムでも活用可能な研修内容を準備して実施する。それと並行して、2年前より校内研究の指導助言者として関わっている1公立中学校の協力を得て、3層の「わかる」学習を配置した授業実践を可能な範囲で実施し、効果検証と課題の整理を行う。なお、本研究は4年計画で2023年度が最終年度となる予定であったが、現状の研究の遅れから判断し、補助事業期間延長を申請することも視野に入れ、研究計画を一部変更しながら完遂したいと考える。
|
Causes of Carryover |
本研究は、教育委員会等が主催する教員研修会の場において研修プログラムの効果を検証する計画だったが、感染症予防対策のために、一部の研修会が双方向型のオンライン研修に変更になったり、中止になったりした。その結果、前年度に続き、印刷教材作成に必要な経費や移動旅費の支出が不要になった。また、学会もオンライン開催になったため旅費が不要になった。これらの理由で生じた残額については、オンラインの研修への対応や授業実践を記録するための物品購入に使用目的を変更し、今後の研究の遂行に活用する。参加を予定していた学会も、すでに2023年度はオンライン開催されることが決まっており、他の費目への変更も含め、有効活用していく計画である。
|