2021 Fiscal Year Research-status Report
親子の社会的関係性に関する胎児期からの縦断研究:子育て支援政策への提言をめざして
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20K03378
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
矢藤 優子 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (20352784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後 克己 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(ポストドクター) (70795351)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オキシトシン / コルチゾール / 生理指標 / 母子関係 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には新たに27名分の唾液検体を回収することができた(有効数22名)。本年度はおもに,産後1・6か月の母子を対象に母親の唾液内オキシトシン(OT)の分泌量と母子の行動観察による社会的関係性指標(かかわり指標)得点の関連について精査した。産後1・6か月の母親のOT分泌量の平均値の比較を行った結果, 産後6か月時点において分泌量が有意に低下していた。また,産後1か月時点で子どもの主体性発達と母親のOT分泌量に負の相関がみられたが,産後6か月時点ではかかわり指標いずれの領域においても相関は見られなかった。OTは母親の出産時に最も高値を示し,その後減少することが報告されている(小川ら,1978)。OT分泌量が多い産後1か月時点の養育者は子どもとの交流が活発になりやすいが, 産後6か月時点で分泌量が低下したことにより,OTの影響が小さくなったことが一因と考えられる。産後1か月の子どもの主体性発達と母親のOT分泌量に負の相関がみられたことについては, OT分泌の多い母親は子どもとよくかかわるため, 子どもの主体性が行動として現れにくかったという可能性が考えられるが, 乳児期は親子間の豊富な交流が重要な時期であることや, 主体性の発達がみられるにはまだ早い月齢であることから必ずしもネガティブな結果とはいえず,慎重な考察が必要である。Miura et al.(2015)によると産後18~48か月の母親のOTと主体性発達への配慮・応答性発達への配慮に負の相関がみられた。産後18か月以降は仲間との交流も増え,子どもの共感性や主体性が発達する時期である。親のOT濃度の高さが示唆する保護の多さは子どもの主体的・応答的な行動の機会を阻害するのかもしれない。これまでの研究ではOT分泌量が多いことは親子の相互交流の豊かさを表す指標であるとされてきたが, 今後はネガティブな影響に関する側面にも注目して分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により検体の手渡しによる授受,対面による説明等が困難となったが,ビデオによる説明動画の配布,宅配による検体の授受をシステム化することによって円滑に研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでと同様にデータ収集を進めるとともに,生理指標の分析結果と行動観察,質問票調査の結果との関連について堀り下げた解析を行う。現在,コルチゾール濃度と質問紙によるQOLやうつ指標等の関連についても分析を行っている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究協力者数が減少したこと,国内外の学会がオンライン化されたことにより旅費の支出が減少したことが理由である。2022年度は,研究協力者数をより多く確保するとともに,成果発表の機会を計画よりも多く設けることを検討している。
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[Journal Article] 妊娠期女性用QOL尺度の作成と信頼性・妥当性の検討2022
Author(s)
孫 怡, 矢藤優子, 妹尾麻美, 神崎真実, 肥後克己, 川本静香, 中田友貴, 安田裕子, 鈴木華子, 岡本尚子, サトウタツヤ
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Journal Title
Journal of Health Psychology Research
Volume: 34
Pages: 210412135
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] A Comparative Study on the Diversity of Postpartum Childcare Support for Working Women and the Well-being of Mothers and Children in China, Japan, and Korea: Toward Science-Based Childcare and Employment Support2021
Author(s)
Yuko YATO, Yi SUN, Na JIANG, Eunji KIM, Juyeon HAN, Eunsoo CHOI, Seung-Lee DO, Joonha PARK, Yuanhong JI, Tatsuya SATO
Organizer
2021 Taiwan Psychological Association (TPA) Conference
Int'l Joint Research
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