2023 Fiscal Year Research-status Report
養育者の洞察的受容と応答による幼児の感情表現・調整の発達への影響
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20K03382
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
篠原 郁子 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (30512446)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 感情発達 / 幼児期 / 親子関係 / 感情調整 / 感情表現 / メンタライジング / アタッチメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,幼児期の社会情緒的能力の発達をテーマとし,具体的には幼児自身による感情の表現や調整にかかる能力の発達について知見を得ることを目的としている。幼児の感情表現およびその調整には,養育者との言語的,非言語的相互作用の経験による影響が注目されている。本研究では特に,アタッチメント理論に基づき研究が重ねられている,養育者による幼児の感情およびその他の欲求や信念等の心的状態への意識の向けやすさや,読み取りの特徴に着目し,それによる幼児の感情発達への影響を問うことを目的とする。 養育者が有する子どもの心的状態に向けられる意識や読み取りの特徴は,近年メンタライジングとして研究されている。本年度は,アタッチメント理論とメンタライジングをテーマに学術研究を概観し,単著書籍を執筆して発表した。 本研究では実証研究として,養育者のメンタライジング,特に幼児への洞察的姿勢や応答が幼児の感情表現,調整の発達に促進的影響を及ぼすという仮説に基づき,主に,以下5点について調査を行うこととしている。①養育者による自身の感情等への認識や調整における特徴,②養育者による子どもの感情等に対する認識の特徴,③養育者による子どもの感情表現への応じ方の特徴,④養育者による子どもの感情に対する応答,⑤幼児の感情表現,感情調整の状態とその特徴。 調査においては幼児を育てる母親と父親の双方を対象として,オンライン調査(アンケート)により,上記5点について情報を収集する。ここまでの調査内容の検討を踏まえ,2024年度に調査実施を行う。養育者による幼児の感情等への認識と幼児の感情表現に対する応じ方の関連,養育者の認識及び行動上の特徴と子どもの感情表現・調整の発達との関連について分析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,計画当初において,親子相互作用場面の観察や,親子への面接,実験の実施を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の流行と,その後の予防対策の観点からこれらの実施を見送ることとした。養育者として母親,父親の双方を対象に,比較的大規模にアンケート調査を実施することができるオンライン調査の実施に向けて,調査設計を進めている。 当初,実験法や観察法により捉えることを企図していたデータをアンケート法で収集するために,アンケート項目の検討と選定に時間を要している。海外で開発された質問項目については適切な日本語への訳出等の作業も必要となっている。また,研究代表者の異動にかかり調査実施を2024年度に見送ったことから,全体の研究進捗はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,以下大きく5点について,幼児の母親と父親を対象にWEBアンケート調査を実施する計画である。①養育者による自身の感情等への認識や調整における特徴,②養育者による子どもの感情等に対する認識の特徴,③養育者による子どもの感情表現への応じ方の特徴,④養育者による子どもの感情調整に対する認識と取組,⑤幼児の感情表現,感情調整の状態とその特徴。 ①および②については,養育者のメンタライジングに関する特徴であり,自己報告式の質問紙尺度を使用して調査を行う計画としている。③,④については,本来的には行動観察によって捉えたい特徴ではあるが,今回の調査では自己報告ながら行動面の特徴について焦点化した既存の尺度を活用しつつ,より幼児期の相互作用に内容を特化した質問項目とする点について工夫を講じたい。⑤については,幼児の発達状態を調べるうえで,養育者の回答という限界は生じるものの,発達調査として信頼性,妥当性のある尺度を複数用いることで情報を得たい。 WEBアンケート調査とすることで,比較的短期間でデータの収集を行うことができると考えている。分析においては,母親と父親それぞれの特徴や,家庭としての特徴にも注目し,幼児の感情表現,調整の発達に促進的な社会的環境の理解につながる知見を得たいと考える。
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Causes of Carryover |
今年度は文献調査の実施と書籍執筆に取組んだこと,また,調査内容の検討と調査設計に必要な情報収集に必要な時間を要したことから,オンライン調査の実施を2024年度に行うこととした。このため,次年度(2024年度)に調査実施のための研究費使用が生じた。 次年度は,研究費を使用してオンライン調査を実施するほか,国際学会および国内学会への参加・発表,データ分析に必要なPC購入,HDD等の購入等を行う計画である。
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Research Products
(2 results)