2020 Fiscal Year Research-status Report
新しい大規模公的テストに有効な教育測定と教育診断のための統計モデルの開発
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20K03383
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Research Institution | The National Center for University Entrance Examinations |
Principal Investigator |
荘島 宏二郎 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (50360706)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | latent rank theory / latent class analysis / biclustering / local dependence / local independence / EM algorithm |
Outline of Annual Research Achievements |
大学入試センター試験が終わり、第1回目の大学入学共通テストが2021年1月に実施された。共通テストでは、センター試験よりも思考力・判断力を測定する項目が大幅に強化された。テストデータを分析する多くの手法(例えば、項目反応理論や潜在ランク理論)では、項目間の局所独立性を前提としている。しかし、共通テストでは、項目間の関連性が強まり、項目間の局所独立性を十分に担保できないようなテスト構造をしている可能性がある。 本研究では、項目間の局所従属性を考慮した新しい分析手法を開発する。その統計モデルは、バイクラスタリングとベイジアンネットワークモデルのハイブリッドモデルであり、既存の統計モデルにはないモデルである。その際、項目群を名義的なクラスに分類することを併せて行う。一方で、受験者集団は順序的なクラス(ランク)に分類する。 本年度は、Ranklusteringという統計モデルの開発を行った。この方法は、標本を順序的なクラス(潜在ランク)に分類しながら、項目を名義的なクラス(フィールド)に分類する手法である。受験者集団を名義的にクラスタリングしながら、項目群をクラスタリングする、バイクラスタリングという手法とは異なっている。これは、フィールド間の局所独立性を仮定しているが、やがて局所従属構造を導入するためのベースとなっている。 母数を推定する際、EMアルゴリズムを用いて最適化することを考案した。また、最適なランク数とフィールド数はベイジアン情報量基準を用いて決めることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、当初期待していたような(特に海外の)専門家との交流を十分に達成することができなかった。しかし、統計モデルの基礎的な開発は順調に進んでおり、国内のオンライン学会を中心に成果を公表することができた。 また、本研究の当初目的ではなかったが、目的を遂行する上で副次的な成果を得ることができた。それらのうち、1つは、多値型リッカート項目の項目間相関係数の理論的な上限と下限を導けたことである。また、もう1つは同一受験者による2科目の散布図に対して、滑らかな離散的な主成分SOMを用いて得点調整を行う方法を開発したことである。 これらのことを総合して鑑みるに、専門家との交流という意味では当初目的を達成できなかったが、開発を中心に研究した結果、いくつかの今後に資する着想を得ることができたため、「概ね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、局所従属構造を仮定した統計モデルを開発することである。その準備は今年度と来年度で整うと思っている。また、続く年度では、実データに適用して開発したモデルを微調整していく。ただし、モデルの構成が複雑であり、本研究の主要な目的の1つである統計ソフトの開発に思いのほか時間がかかりそうな予感を持っている。善処したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、学会出張費がかからなかった。また、開発に関する費用は、今年度は少額のため、他の研究費で十分に賄うことができたため。
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Research Products
(4 results)