2022 Fiscal Year Annual Research Report
母子家庭で育つ子どもの回復プロセスー父母の関わりを含めた家族システムを通して
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20K03386
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
堀田 香織 埼玉大学, 教育学部, 教授 (10251430)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 母子家庭 / シングルマザー / 離婚 / 父子面会交流 / 家族システム |
Outline of Annual Research Achievements |
子どもが不登校や学業不振、情緒障碍などの困難を抱えている母子家庭を対象とする追跡調査が可能であった5組の母子家庭の内、2組では子どもが小学校高学年に至るまでに学校における問題が軽減した後、社会的自立に至っており、1組では思春期以降も不登校などの問題を長く抱えていたものの結婚し自立に至っており、残りの2組では社会に出てからも不適応を起こしひきこもり状態にあった。結果として<単独><閉鎖><密着><直接><対等>が母子家庭の困難さの要因として浮かび上がり、父親をめぐる家族システムとしては、①母子連合・父親価値下げ家族システム、②父子連合母親価値下げ家族システム、③母子連合・父親との結びつき維持システムの3つのタイプが見いだされた。そして、母子分離し、母親連合・父親連合独立システムが形成されることによって、母親のストレスが緩和するとともに、ネガティブな父親像投影が消失し、父親の再評価がなされるプロセスが明らかになった(心理臨床学会第39回)。 なお、父子面会交流については、2017年度アンケート調査協力者の中から10名のシングルマザーを対象にインタビュー調査を行った結果、離婚時は面会交流に反対していたものの、調停員の強い勧めにより面会交流をスタートさせ、面会を重ねる中で子どもが喜んでいる姿が見られたことにより気持ちの変化が芽生えた例、予想していた悪影響がないことが分かったため、子どもが望むなら継続しても良いと考えるようになった例があった一方、面会交流によって子どもが精神的に傷つけられる不安、将来つきまとわれる恐れなどから面会交流に否定的な例もあった。全体として、ほとんどの母親が父親と情報交換することにストレスを感じ、養育費等についてのやりとりはしていても、子どもについての父母間の情報共有はほとんどなく、離婚後のコペアレンティングの困難がうかがわれた(心理臨床学会第41回大会)。
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