2020 Fiscal Year Research-status Report
眼球運動計測を用いた認知機能評価パラダイムETACの開発
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20K03396
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
國見 充展 茨城キリスト教大学, 生活科学部, 准教授 (70460384)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経度認知障害 / スクリーニング / 神経心理学検査 / 脳画像検査 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,臨床場面への応用を想定した眼球運動計測を用いた認知機能評価パラダイム(Eye-tracking-based assessment of cognitive function: ETAC)の開発を試みる。今年度は軽度認知症(Mild cognitive impaired: MCI)スクリーニング用アセスメントツール作成に向けた課題抽出のため,MCIの精査に適した神経心理学的検査および脳画像検査をレビューした。神経心理学的検査群については,MCIのアセスメントに有効と思われる代表的な神経心理学的検査の現状と諸課題を述べたうえで,これら検査群にみられる課題として,①検査実施のタイミングによって高齢者の覚醒水準が安定しない可能性,②練習効果への対応の難しさ,③検査者に一定の専門的技能が求められること,④来院が前提となっていることを主張した。 また脳画像検査群については,脳形態画像,脳機能画像によるMCI検査のそれぞれの現状を述べたが,両者に共通する課題として,①被ばくに対する忌避感,②そのすべてが大型装置によるものであり,操作者は安全面,技術面での専門的なトレーニングが必要であること,③装置の導入,またその利用が高額であること,④計測時間が長時間にわたること,⑤撮像中に体動および体勢が制限され,特に機能的画像検査では、日常場面と大きく異なる状況下での評価となってしまうこと,⑥利用者の制限があること,などを主張した。 本レビューを通じ,認知機能の低下を自覚,意識しにくい対象者を想定しながらも来院を前提としている矛盾点と,検査実施に際して専門家の同伴を要する点の2つの共通課題を抽出した。したがって,必ずしも専門家が同伴せず,簡便かつ短時間で実施ができ来院を促す“きっかけ”となるアセスメントツール開発の必要性を論じた。 本研究の成果は現在,学会誌に投稿済みである(審査中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に先立ち,MCIの精査に適した神経心理学的検査および脳画像検査をレビューした。この成果は学会誌に投稿中であり,本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。 しかし,コロナ禍の影響で今年度は予備実験を含む対人実験を行わなかった。そのためETAC課題の要求仕様に関しては,確認が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
連携医師に評価をもとめ,ETAC課題を高齢者に配慮した図と地の色,およびコントラスト,1試行にかかる時間と試行数を検討する。さらに,実験実施時に使用する質問紙を吟味する。認知症スクリーニング検査(MMSE, HDS-R)や知能検査(WAIS-Ⅳ)のほか,生活機能評価(基本チェックリスト)や効き目チェックなども候補とする。連携医師の意見を受け,所要時間と利用者の負担を踏まえて実施項目を吟味する。 コロナ禍の様子をみつつ,19-21 歳の大学生 20 名に対する実験に参加を行う。上記を踏まえた実験プロトコルβ版を行い,タスク遂行中の眼球運動をゴーグル型眼球運動計測装置(Tobii pro 1200)によって計測する。実用化に向けた要求仕様の確認に重点を置き,得られたデータの再現性を確認する。課題が見つかった場合は従属変数の再検討を行う。さらに実験参加者の実験後の感想および連携医師による評価から,プロトコルの安全性や利用者にとっての簡便性を吟味する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため,関連研究の資料整理とレビューに終始し,20年度は対人実験を実施しなかった。そのため,人件費,旅費,消耗品費等に差が生じた。 21年度,コロナ禍の様子を見つつ,若年者から実験を開始する。
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