2022 Fiscal Year Research-status Report
小中学生における発達段階別・無気力感構造の検討と予防チェックリストの開発
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20K03413
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
牧 郁子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70434545)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小学生 / 中学生 / 無気力感 / 尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.小学生・中学生共用版の尺度作成と信頼性・妥当性の検討:昨年度作成した,小中供共用を前提とした,無気力感尺度,主観的随伴経験尺度,コーピング・エフィカシー尺度,思考の偏り尺度,情動交流尺度の各原項目に基づき作成したアンケートを,小学校4・5・6年生と中学校1・2・3年生の児童生徒計720名を対象に実施した。その結果,すべての尺度において小学生・中学生ともに概ね同様の因子構造が認められたため,小学生と中学生の合算データを用いて分析を行った結果,いずれの尺度においても解釈可能な因子が確認され,信頼性・妥当性が検証された。その結果,小中共用版・無気力感尺度(21項目・2因子構造),小中共用版・主観的随伴経験尺度(16項目・2因子構造),小中共用版・コーピング・エフィカシー尺度(6項目・1因子構造),小中共用版・思考の偏り尺度(8項目・1因子構造),小中共用版・情動交流尺度(12項目・2因子構造)が完成した。 2.小学生と中学生における,無気力感構造の発達段階的違いの検証:作成した無気力感およびその構成要因を測定するための小中共用尺度を用いて,小学生・中学生別,および学年別に,無気力感構造の違いを検討するための解析を行った。その結果,小学生においては保護者との情動交流の乏しさが主に随伴経験とコーピング・エフィカシーの低下につながり,無気力感に関与している可能性が示唆された。一方中学生においては,保護者との情動交流の乏しさが,随伴経験とコーピング・エフィカシーの低下および非随伴経験と思考の偏りの増加にも影響し,無気力感に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度,予定していた小学4年生~中学3年生を対象とした調査研究を実施し,そのデータをもとに,無気力感およびその構成要因を測定するための,小中共用尺度を作成することができた。また作成した尺度をもとに,小学生と中学生,および学年別における,無気力感構造の発達段階的違いの検証も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.無気力感高群における校種別・学年別分析:児童生徒における気力や行動意欲の低下,および抑うつのリスクを検討するため,無気力感尺度各因子高群を抽出し,その構造を校種別・学年別に行う予定である。 2.無気力感の回答パターン別における主観的随伴経験,コーピング・エフィカシー,思考の偏り,保護者との情動交流の違いの検討:無気力感尺度各因子の回答パターン別に,主観的随伴経験,コーピング・エフィカシー,思考の偏り,保護者との情動交流がどのように違うのかを,校種別・学年別に解析を行う予定である。 3. 発達段階別・子どもの無気力感予防チェックシート項目案の策定:R4年度およびR5年度におけるデータ解析結果に基づき,発達段階の違いを考慮した無気力感予防チェックシート項目案を策定する予定である。 4.無気力感予防チェックシートの内容妥当性の検討: 策定した項目の内容妥当性のチェックを,小学校・中学校教師に依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
発達段階別・子どもの無気力感予防チェックシートを作成するために,国内外の論文・書籍の購入が必要である。また解析結果に関して学会で発表し,研究者コミュニティーから意見聴取を行う必要があるため,学会年会費・参加費および参加のための交通費・宿泊費等の諸経費が必要である。さらに作成した「子どもの無気力感予防チェックシート」の内容妥当性に関して,小学校・中学校教師に依頼するための文書郵送費,および意見聴取のための交通費等が必要である。
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