2023 Fiscal Year Annual Research Report
幼児後期から児童期における自他身体認知の発達と共感性の深まり
Project/Area Number |
20K03415
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
成瀬 九美 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (90193581)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自己身体認知 / 運動・認知課題 / 生体力学的制限 / メンタルローテーション / 把握動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は成長過程においてボディ・イメージ(Body Image),身体構造表象(Body Structural Representation),身体図式(Body Shema)などの身体表象を形成していく.ボディ・イメージが意味的で感情的な側面を持ち意識的であるのに対して,身体構造表象と身体図式は暗黙的・無意識的であり、前者は人体各部位の配置を視覚・空間的に認識する非動作志向型、後者は動作のプランニングやモニタリングに関わる動作志向型の身体表象である。本研究は手掌・手背写真のメンタルローテーション課題(以下MR課題)や棒を回転操作する棒回転課題を実験課題として、児童期の自己身体認知の発達を捉えた。今年度はこれまでに収集したデータを総合的に分析し、両課題の運動・認知課題としての妥当性や課題遂行を分析する観点を整理した。MR課題において、筋感覚的経験を持ちえない倒立180度を中心とする左右3角度(120,180,240)に対する小学校中学年の正答率は低学年より有意に高く、身体部位を客体化して空間的・視覚的に処理する能力は9~10歳までに獲得されていた.棒回転課題において、任意の回転幅で安定して遂行を継続するためには視覚情報(棒の傾き角度)と身体感覚(腕の捻じれ具合)の双方を処理する必要がある。5歳児は回転遂行の中盤から明確な停止が作れず、達成率は28%に留まった。遂行破綻は右回転の135(-315)度付近、左回転の225(-45)度付近の停止を契機に遂行破綻が生じており、身体可動域を感じつつ、棒の傾きに応じた捻じり(回内/回外)を形成することは困難であった。本研究の手掌・手背写真のMR課題は身体構造表象が、棒回転課題は身体図式が関与し、その遂行において身体構造の生体力学的制限を内受容感覚として処理できるかどうかに着目することが児童期の自己身体認知の発達を把握するうえで重要となる。
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