2020 Fiscal Year Research-status Report
強みや強みを伸ばそうとする心理教育がネガティブな効果をもたらすとき
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20K03428
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
津田 恭充 関西福祉科学大学, 心理科学部, 准教授 (80635665)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 強み / キャラクター・ストレングス / 謙虚 |
Outline of Annual Research Achievements |
品性の強み(character strengths)とは心理的な長所や美徳のことで、Perterson & Seligman(2004)による800ページに及ぶ著書には、10の基準を元に古今東西の文献から抽出した24の強みがまとめられ、いかに強みが強みたるかが説明されており、もっとも重要な強み研究のひとつとなっている。強み研究はDSMとは逆に「良いことリスト」を作ろうという発想に基づいており、強みはその定義上、ポジティブな特性であるとされているが、本研究課題はその前提に疑問を投げかけるものである。というのも、「防衛的悲観主義(Norem & Cantor,1986)」や、「成功しているサイコパス(Mullins-Sweatt et al., 2010)」といった、一般的にはネガティブな特性や認知も、場合によってはポジティブな効果をもつことを示した研究があり、ある特性や認知がネガティブ(あるいはポジティブ)であるか否かは普遍的なものではないと考えられるためである。
2020年度は、強みの中でも謙虚(humility)に焦点を当て、謙虚がポジティブな効果をもつ条件について検討を行った。謙虚は複雑な概念であるが、先行研究や辞書的定義に基づいて、ここでは謙虚の中心的な特徴を「控えめであること」とした。検討の結果、控えめなことが自己抑制的な形で現れるときには主観的幸福感にとってネガティブであるが、そうでないときには主観的幸福感にとってポジティブであることを明らかにした。
また、効果について論じる際、有意か否かの二分法ではなく、それがどの程度の効果なのかを明らかにするほうが有益である。このことについても強み研究と併せて論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説どおりの結果が得られ、研究は順調に進んでいる。学会大会が中止されたりオンラインとなるなどの影響で研究成果の迅速な公表にはつながっていないが、その分のリソースを論文執筆に充てることで問題に対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
謙虚を自己評定する際、謙虚な人は謙虚さを尋ねる質問自体に謙虚に答えてしまい得点が低くなる可能性がある。反対に、自分が謙虚であると自信をもって答えることは傲慢であるといえる。先行研究では、自己評定と他者評定には高い相関が確認されており、謙虚な人と傲慢な人が入れ替わってしまうようなバイアスは確認されていないが、より正確な検討を行うため、今後は他者評定などの他の方法で謙虚を測定し、同様の検討を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
予定していた機器の購入が一部次年度にずれこんだことと、新型コロナウイルスの影響で出張をすべて取りやめたため次年度繰越金が生じた。旅費の繰越金は論文の投稿費用等に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)