2020 Fiscal Year Research-status Report
災害支援研究:災害被害とその後の諸経験が適応状態に与える中長期的影響について
Project/Area Number |
20K03432
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
前田 潤 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90332478)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害支援 / 災害被害 / 適応状態 / 新型コロナ / 2018年北海道胆振東部地震 / 中長期的影響 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害は直接的な被害だけでなく、人々の心身に大きな影響を与え、大きなストレスとなる。一方人々は、災害から生活を立て直しつつ、ストレスに対処していくことが求められる。2020年は、新型コロナウイルスが世界中の人々の日常生活を変貌させ、災害支援研究としての本研究計画も当初計画を改めて、現実的脅威としてのコロナの実態に直接向き合いながら実施可能なところから着手することとした。 第一に実施可能となったのは、2018年北海道胆振東部地震で被災地となって、それ以降継続的に調査及び支援活動を行っている被災地の高校での心身影響調査であった。調査は、2020年6月の緊急事態宣言による一斉休校開けに行った。 胆振東部地震後のストレス度は、発災直後よりも大きな余震があった後に最も高まったが、コロナによる休校明けのデータは、余震後データよりもストレス度が高まっていることが示され、特に、「イライラ」と「不安」で高くなっていた。この結果は、学校教員間で共有し、生徒の実態把握に役立てるとともに、地方紙を通じて公表され、コロナが感染症としての脅威だけでなく、心身に大きなストレスを与えている事実として広く市民に共有されることとなった。 次に行ったのは、東日本大震災後10年の被災地状況調査である。10年前に研究代表者が支援活動に携わる上で拠点となった日本赤十字社岩手県支部を訪ね、現在の支部としての課題、被災沿岸部での現状と課題に関するインタビュー調査を実施し、やはりコロナによってもたらされている現状の問題点を現地の支部職員と検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時には想定していなかった世界的なコロナ禍にあって、申請時の当初計画とは研究計画は大幅な修正を余儀なくされたが、災害支援研究、という本研究の大枠に沿った形で、コロナが若年者に与える影響の実態調査を実施することができた。これにより、地震災害と、コロナ禍という異なった性質の災厄が人々に与える影響について比較検討するための資料を得ることができた。こうした人々の現状を把握することによって、災害支援を考えることができる、という意味で概ね順調に進展したと言える。 また、2021年は東日本大震災から10年の節目年であった。研究代表者は、10年前の災害において組織的心理社会的支援活動の実情と課題について研究を行い、支援活動にも関わってきたが、その被災地の現状とコロナ禍がその地域の支援活動に与える影響についても調査することが可能となった。これは研究計画時には予想していなかった調査研究であり、災害支援研究に大きく寄与する研究となったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2018年北海道胆振東部地震の被災地における被災高校に継続的に調査を行なって、その推移についてコロナが与える生活環境への影響との関連について検討を加えていくことが、第一の課題となる。 その上で、現在調査が進んでいない2000年有珠山噴火災害が20年後の現在に人々に与える影響と、長い経過の中で、ポジティブな変化をもたらすことができる要因についての調査研究を行う事が2021年度と2022年度の課題となる。この調査は、コロナがもたらす国全体への影響を抜きに進めることはできないので、事態の推移を注視しつつ、対面による調査ではなく、Web調査や何らかの間接的手段などの可能な方法で実施することも考えていく必要があると思われる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、有珠山噴火災害後20年の影響調査の実施が延期され、これにかかる経費が全て次年度に繰り越されることとなった。さらに、学会や研究打合せがリモートとなって旅費の支出がほぼなかったことと、参加予定であった国際学会も延期となった。 これについては、コロナの推移を見ながら2021年と2022年度に実施し使用される予定である。
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