2020 Fiscal Year Research-status Report
EMDRのメカニズムの解明 -バイオマーカーを用いた研究-
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20K03443
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
米田 孝一 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (90706798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10452947)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PTSD / トラウマ / 不快な記憶 / EMDR / NIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
不快な記憶、トラウマに対する心理療法の一つに眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing; EMDR)がある。EMDRのメカニズムについての仮説は挙げられているが、まだ解明されていない。EMDRが不快な記憶やトラウマ記憶に対してどのように作用するのかを明らかにするために、本研究では心理的変化、近赤外線分光法(Near-infrared spectroscopy; NIRS)による脳活動の変化、唾液中のストレス物質の変化を同時に捉える。EMDRにおける両側性刺激が脳血流にどのような影響をもたらすかを基本パラダイムの中で検証することから研究を始めたところである。しかし、2020年度は残念ながら新型コロナウィルス感染症流行のために、機材立ち上げの遅延に加え、人を対象にした実験を行うことが困難となったため、ごく限られた人数の被験者を対象にした予備実験で終了した。そのため、まとまった結果や示唆を引き出すほどのデータが得られなかったが、これまでの実験では次のような傾向を得た。 (1)不快な記憶、トラウマ記憶を想起しているときに前頭葉の血流は増加する。 (2)EMDRの両側性刺激によって、上記の血流は低下する。 (3)再び上記の不快な記憶、トラウマ記憶を想起しても血流は増加しない。 新型コロナウィルスコロナ感染者が減少した時期を見計らいながら、2年目の研究を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年4月から1年間、新型コロナウィルス感染症の流行が続いたことにより、次のような事態となった。 1)実験装置納入の大幅な遅れ 2)大学構内立ち入り禁止に伴う機材立ち上げの遅れ 3)本研究課題ではまず健常者を対象にして光トポグラフィ測定を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染対策の観点から至近距離での実験を控える必要があったため、実験を行えなかった。 以上の理由で研究進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
県内で新型コロナウィルス感染者数が減少している期間を利用して、十分な感染対策をとった上で健常者を対象にした実験を行うのと同時に平行して、PTSD、トラウマ・不快な記憶に基づいた気分障害等の患者の協力を得て、臨床例を対象とした実験も進行させていく予定である。 (1)心理療法の一つである「眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing; EMDR)」の基本的手法である両側性刺激を用いた単純パラダイムを用いて、不快な記憶想起前後の脳血流変化を近赤外線分光法(Near-infrared spectroscopy; NIRS)で計測する。 (2)不快な記憶想起前後のストレス反応として唾液アミラーゼを測定する。 (3)心理的変化は否定的自己認知に伴う否定的感情の強度 (subjective unit of disturbances: SUDs)で測定する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症流行に伴い、被験者を対象とした実験が行えなかったため被験者謝金を使用しなかったためである。また、データ処理及び保存に必要なハードディスクやUSBメモリの購入をしなかったためである。次年度においては上記理由で行えなかった実験に関わる被験者謝金、データ保管のための記憶媒体の購入に使用する計画である。
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