2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of Continuous Heart Rate Variability Training on Baroreflex and Cortical Activity
Project/Area Number |
20K03473
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
榊原 雅人 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (10221996)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 心拍変動 / 圧受容体反射 / 皮質活動 / 心拍変動バイオフィードバック / ペース呼吸 |
Outline of Annual Research Achievements |
心拍変動(heart rate variability: HRV)を増大させる技法はさまざまな心理生理的症状を緩和し、特に、抑うつや不安の改善に成果を上げている。HRVの増大は圧受容体反射機能を活性化させることで効果を発揮すると考えられているが、一方で皮質活動に及ぼす効果については詳しく調べられていない。本研究は継続的な心拍変動増大訓練が圧受容体反射と皮質活動に及ぼす効果を検討することを目的としている。 2020年度は、これまでに筆者らが開発した効率的な心拍変動の増大手順(心拍変動低周波成分のピーク周波数をペース呼吸の基準とする方法, Sakakibara et al., 2020)の再現性について5名(22~47歳)の健常者において検討した。安静測定および15cpmのペース呼吸を行った後、6cpm、6.5cpm、5.5cpm、5cpmのペース呼吸を実施した。次に、15cpmペース呼吸下の心拍変動低周波ピークを検索し、その周波数を基準としたペース呼吸を行った。実験では心電図、連続血圧、呼吸を測定した。また、今年度に実施予定の継続的な心拍変動増大訓練に利用するため、市販のスマートフォンアプリを介して心拍変動を同時計測した。 実験の結果、従来法(5~6.5cpmのペース呼吸)に比べて筆者らの開発した手順はより顕著な心拍変動の増大を引き起こすことが確認された。また、スマートフォンによる心拍変動の評価は標準的測定法と概ね同様の結果をもたらした。 これらのことから、継続的な心拍変動増大訓練を行うにあたり、筆者らが開発した方法が十分に利用できることが確認された。さらに、実験参加者が自宅で継続訓練を実施する場合、スマートフォンアプリを補助的に利用できることが確かめられた。これは実験室の標準的測定法による心拍変動の評価を補足する役割をもち、コロナ禍の状況においても有用であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては心拍・血圧ゆらぎ解析システムを導入し、シーケンス法およびスペクトル法による圧受容体反射感度の評価を確認した。また、生体情報(脳波等)測定装置も予定どおり導入し、計測確認を行っている。 今年度前半には生体情報測定装置を利用して事象関連電位を測定する。ここでは情動の喚起を伴う刺激に対する事象関連電位を取得し、解析テストを行う予定である。同時に、心拍変動増大のための継続的訓練のプロトコルを確定する作業を行う。これをもとに実験への参加者を募り、秋以降から本実験を進める予定である。 コロナ禍の影響もあり、事象関連電位の計測確認の例数はやや少数に留まっている。しかしながら、実施計画のもと概ね遅滞なく進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
心拍変動増大を目的とした継続的訓練のプロトコルを作成する。具体的に、実験参加者が継続訓練に取り組みやすい(なるべく脱落が起きないように)ワークブック形式の記録方式を作成する。実験参加者は訓練ごとの状況(実施状況、実施上の疑問など)を記載できるようにすることで、練習者と実験者の双方が訓練の進捗を確認できるようになる。 事象関連電位の測定テストを繰り返し行い、評価方法の信頼性の確認を行う。はじめに情動を喚起する刺激(例えば、顔刺激)を準備し、PCを使って表示するプログラムを作成する。さらに事象関連電位の最適な評価ができるように、提示頻度等を工夫して感度を高められるようにする(例えば、オドボール方式での提示など)。 一方で、圧反射感度の計測確認を実施する。これについては従来からの実施方法を継続するが、センサの劣化などがないかチェックしながら、適切に連続血圧が測定できるか確認する。また、心拍変動増大の際の血圧の振る舞いを詳細に確認できるようにする目的で、心拍変動と連続血圧(および呼吸活動)の位相関係を分析するソフトウエアを準備する(発注済み)。これにより、心拍変動増大訓練による圧受容体反射の刺激が効率的になされているかどうか視覚的に確認できるようになる。 研究に使用する解析システムの効率化を図るため、処理速度の高いコンピュータへのソフトウエアの移設を行う。これについては研究協力者と連絡しながら進めている。また、全体の研究計画の進捗について、研究協力者と定期的なミーティングを実施することとしている。
|