2021 Fiscal Year Research-status Report
Effects of Continuous Heart Rate Variability Training on Baroreflex and Cortical Activity
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20K03473
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
榊原 雅人 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (10221996)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心拍変動 / 圧受容体反 / 心拍変動バイオフィードバック / ペース呼吸 / 自律神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
心拍変動(heart rate variability)を増大させる技法(心拍変動バイオフィードバック)はさまざまな心理生理的症状(抑うつや不安など)の改善に成果を上げている。心拍変動増大には一定頻度(約0.1Hz)の呼吸コントロールが重要であり、これにより圧反射機能を活性化させ効果を発揮すると考えられている。本研究は心拍変動増大訓練を継続的に行ったときの圧反射と皮質活動に及ぼす効果について検討することを目的としている。
2021(令和3)年度は継続訓練(自宅練習)に利用するため、スマートフォンアプリを介した心拍変動計測の妥当性を検証した。実験では心電図と血圧を同時測定し共鳴周波数(最も大きな心拍変動が起こる呼吸の速さ)の特定を行い、アプリを使った測定においても同様の評価が可能になるかどうか調べた。その結果、アプリによって特定した共鳴周波数は標準的方法によって特定した共鳴周波数と高い相関係数を示した(r=0.89)。この結果は、訓練参加者の共鳴周波数を遠隔で把握し教示できることを示している。本研究の成果は関連学会にて発表した。
さらに、本年度は呼吸コントロールの特徴について歴史的な観点から考察した。日本古来の養生書を参考に「緩徐な呼吸法」の記述を辿ったところ、白隠禅師の「夜船閑話」には現代のリラクセーション技法と合致する記載が随所にみられた。具体的に、白隠が禅病を克服したエピソードから発展したと考えられる内観法、軟酥の法、呼吸法は、現代リラクセーション技法(丹田呼吸法や自律訓練法など)と共通することが指摘された。一方で近年の呼吸(法)に関する心理生理学的研究は心拍変動、皮質活動(脳波、前頭部脳血流)、セロトニン神経活動などと関連し、このような知見と比較しながら緩徐な呼吸法に関する文献的研究を実施した。本検討の成果は国際学術誌などに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに心拍・血圧ゆらぎ解析システムを導入し、シーケンス法およびスペクトル法による圧受容体反射感度の評価を確認した(2020年度)。また、生体情報(脳波等)測定装置についても予定どおり導入し、計測確認を進めている。当初予定していた事象関連電位の計測に代え、スマートフォンアプリを介した心拍変動計測の妥当性の検証を行った(2021年度)。これはコロナ禍の影響のため取り組み可能なものを優先したためであるが、全体的な実施計画は概ね遅滞なく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前半は、生体情報測定装置を利用して事象関連電位を測定する。ここでは情動を喚起する刺激に対する反応を取得し解析テストを行う予定である(刺激提示については他の手順も考えられるため、慎重に検討し適切に選択することとする)。
一方、心拍変動増大の継続的訓練のプロトコルとして、実験参加者が取り組みやすいワークブック形式の訓練記録フォーマットを作成する。このフォーマットには、心拍変動増大の訓練に継続的に取り組むことができるように、「呼吸法の手順」をわかりやすく説明するとともに、「リラクセーションに関する全般的な知識」、「休息を得るための効果的な導入」、「睡眠と休息の関係」、「ストレスに関する知識(およびその緩和」などの啓発的な内容を掲載する予定である。
その後、心拍変動継続訓練が圧受容体反射と皮質活動に及ぼす効果を検討するため、実験参加者を募りデータを収集する計画である。この介入の前後において事象関連電位を計測し、訓練効果の評価を行う。解析システムの効率化を図るため処理速度の高いコンピュータへのソフトウエアの移設を行う。全体の研究計画の進捗について、研究協力者と定期的なミーティングを実施し、遅滞なく計画を実施できるようにする。
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