2022 Fiscal Year Research-status Report
A multilevel study of cultural effects on well-being in older people
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20K03475
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
廣川 空美 関西大学, 社会安全学部, 教授 (50324299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
権藤 恭之 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (40250196)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文化的価値 / 高齢者 / 幸福感 / 抑うつ感 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は下記の2つの分析を行い、第33回日本老年医学会近畿地方会において研究発表を行った。 1.SHAREデータによる13ヵ国の分析 少子高齢化社会が進むヨーロッパ13カ国における文化的価値観と高齢者の幸福感との関連性を検証した。Hofstedeの権力格差、個人主義、男性性、不確実性の回避の4つの文化的価値観と、SHAREデータの幸福感(CASP-12)のそろっている13カ国の65歳以上の25,995名(男性11,987名・女性14,008名)のデータを用いた。年齢と4つの文化的価値観を説明変数、幸福感を目的変数とした重回帰分析を行った。国のGDP、高学歴割合、個人の健康指標を交絡要因として調整した。その結果、年齢と幸福感は有意な負の関連が示され、個人主義得点は幸福感と有意な負の関連を示した。個人主義高低の2層に分け、男女別で年齢と幸福感の関連を検証した結果、男女ともに集団主義の国では年齢が上がるほど幸福感が下がる傾向が強いが、個人主義の国ではその傾向が弱められる可能性が示唆された。 2.HRSデータ分析 高齢者の抑うつ感におけるアメリカ合衆国の地域差の要因を検証した。抑うつ感の指標としてCES-D得点があるアメリカ合衆国の65歳以上の高齢者1,476名(男性215名・女性564名・その他697名)のHRSデータを用いた。居住地域はNortheast、Central、South、Westernの4つとした。性、年齢、出身地域、個人の教育歴、健康指標、収入等の経済指標を交絡要因として調整した。居住地域を独立変数、CES-D得点を従属変数として分散分析を行った。その結果、高齢者のCES-D得点が最も低いのはNortheastで、身体的健康度が高く、年金受給申請者が多い特徴が示された。高齢者の抑うつ感には、地域の高齢者への経済的支援の要因が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
公開されているHarmonizedデータについて、データ内容を確認するためにかなりの時間を要した。2022年度はSHAREデータとHRSデータを用いた解析を行うことができた。この結果に基づいて、日本国内の高齢者の幸福感について、地域差を検証し、公衆衛生的活動としてどのような取り組みが求められるのかを検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度、研究機関を1年延長し、日本国内における高齢者の幸福感の地域差を検討し、文化的価値感の特徴を踏まえ、どのような要因が幸福感に影響を及ぼしているのかを検証する。 また、幸福感との関連性があると想定されるホルモンについて、特にテストステロンやコルチゾール値との関連性を検証する。 これらの結果を踏まえて、高齢者の幸福感を高めている要因を抽出し、幸福感を高めるための地域活動プログラムを考案することを目指す。
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Causes of Carryover |
公開されている海外における大規模調査であるSHAREデータやHRSデータのデータセットを解析するまでに時間を要したため、研究期間を1年延長する必要性が生じた。 2023年度は引き続きデータ解析を行い、結果を論文化する予定である。また、日本国内の高齢者の幸福度と生理的指標との関連や、地域差の要因を検証するため、調査を実施する予定である。 データ解析や資料収集を行うため、事務的補助の人件費、調査費用に助成金を使用する予定である。
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