2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03486
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
永井 聖剛 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (00415720)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多感覚認知 / 感覚間統合 / 運動反応 / 発声反応 / 握力発揮 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる感覚間モダリティの相互作用,感覚間統合については視聴覚間を中心として様々な検討が行われている。しかしながら,知覚・認知情報処理と運動反応・筋運動そして体性感覚を軸とした感覚間相互作用,感覚間統合についてはほとんど研究されておらず,その詳細は明らかになっていない。 本研究では,知覚・認知が運動反応・体性感覚に与える影響,運動反応・体性感覚が知覚・認知および高次の社会的認知や思考に与える影響を明らかにすることを目的とする。研究成果から知覚,思考,運動反応システムにおいて多様な情報が抽象化された次元で表現され,相互に影響することを示し,「Theory of Magnitude」や従来の多感覚統合研究の知見を拡張した新たな情報処理モデルの構築に寄与する。 知覚-運動間の相互作用について,今年度は主として発声行動を行っているときの動画(視覚情報)が発話音声に与える影響についての検討を行った。具体的には,参加者の発声音情報の録音,解析等の実験システム構築を行い,実験を実施した。実験ではスピーカから聞こえる発声音声を即座に模倣することが求められ,実験の結果,動画の視覚情報が発声音声に影響し,参加者は視覚的に表現された発声に近い発声を行っていることが示唆された。加えて,視覚刺激および聴覚刺激の筋発揮への影響を検討するための実験システムの構築を行った。具体的には,視覚刺激提示と握力発揮の計測システムの時間制御を連携させるシステムを作成し,また,このシステムは,発揮される握力値の最大値だけではなく,時間毎の握力値を記録解析できるものであった。予備的に行った実験では,提示される視覚刺激サイズが大きいとき小さいときに比べて,最大握力値が高くなること等を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発声行動を行っているときの動画の視覚情報が発話音声に与える影響について,参加者の発声音情報の録音,解析等の実験システム構築を行い,実験を実施した。実験ではスピーカから聞こえる発声音声を即座に模倣することが求められた。実験の結果,動画の視覚情報が発声音声に影響し,参加者は視覚的に表現された発声に近い発声を行っていることが示唆された。また,その影響には大きな個人差があり,その個人差の説明要因について今後検討する予定である。 視覚刺激の筋発揮への影響を検討するための実験では,視覚刺激提示と握力発揮の計測システムの時間制御を連携させるシステムを構築した。また,このシステムにおいては,発揮される握力値の最大値だけではなく,時間毎の握力値を記録解析できることを特長とする。予備的に行った実験では,提示される視覚刺激サイズが大きいとき小さいときに比べて,最大握力値が高くなること等を確認している。また,視覚刺激だけではなくて,聴覚刺激の質を変化させて提示するためのシステム構築を済ませており,多様な刺激属性が筋発揮にどのような影響を与えるかを検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はコロナ感染症のため実験が行えるか不透明であるが,可能な限り,運動反応・体性感覚に関連した様々な属性が知覚認知とどのように相互影響するかについて多角的な検討を行う。また,状況をみつつ,非対面web実験で行えるテーマへの転換も含め研究を進める予定である。同時に過年度に行った実験データを別の観点から再分析することも検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定した実験を全て完了できず,実験関連費用に余剰が生じ,次年度に研究費を使用する必要があった。 次年度では,コロナ感染状況を踏まえつつ,対面での参加者実験が可能な時期に実験を集中して行い,過年度の実験進行の遅れを可能な限り補う予定である。また,実験が集中することに伴い,複数の実験を同時に遂行するために,実験機材の追加購入も検討し,効率的な実験実施を目指す。
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