2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03486
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
永井 聖剛 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (00415720)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多感覚認知 / 感覚間統合 / 運動反応 / 社会的認知 / 顔認知 / 自己認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる感覚間モダリティの相互作用,感覚間統合については視聴覚間を中心として様々な検討が行われている。しかしながら,知覚・認知情報処理と運動反応・筋運動そして体性感覚を軸とした感覚間相互作用,感覚間統合についてはほとんど研究されておらず,その詳細は明らかになっていない。本研究では,知覚・認知が運動反応・体性感覚に与える影響,運動反応・体性感覚が知覚・認知および高次の社会的認知や思考に与える影響を明らかにすることを目的とする。研究成果から知覚,思考,運動反応システムにおいて多様な情報が抽象化された次元で表現され,相互に影響することを示し,「Theory of Magnitude」や従来の多感覚統合研究の知見を拡張した新たな情報処理モデルの構築に寄与する。 今年度の研究成果の一つとして,昨年行った視覚刺激サイズが握力に与える効果に関して洗練されたパラダイムを用いて実験を行った。実験の結果,刺激サイズに応じて参加者が自発的に発揮する握力が増大することを明瞭に示すデータを得た。次に,運動反応が社会的認知に及ぼす効果について,自己認知に関連した指標を用いて計測するための技術を構築するための研究を行った。ここでは,自己が認知する顔を可視化することで,自己肯定バイアスを測定することを試みた。実験の結果,自己に類似するが,自己理解によって変調された顔を適切に可視化することに成功した。この可視化技術を用いて,視覚的イメージによる自己認知に関連した社会的認知を計測する足がかりを得たと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度はコロナ感染症の影響が依然として残り,進捗が遅れる主な要因となった。研究では,刺激サイズと発揮握力との関係を明らかにするために,参加者の自発的な運動効果をより純粋に抽出するための新しい実験パラダイムを構築した。加えて,運動が社会的認知に与える効果についての計測指標として自己認知顔の可視化を試み,classification imageという特長ある心理物理法を導入して実現した。この過程において,従来のclassification image法とは異なる特徴のもとで計測を行いつつ,すなわち,基礎画像,課題,試行数等の見直しをはかり,本手法の改変に取り組んだ。この新しい手法は,今後,様々な自己認知や他者認知に利用,導入できるものと期待され,本研究課題については自己発声運動と自己認知の関連を検討する研究などに適用を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はコロナ感染症の余波が引き続き残る可能性もあるが,可能な限り,運動反応・体性感覚に関連した様々な属性が知覚認知とどのように相互影響するかについて多角的な検討を行う。また,状況をみつつ,非対面web実験で行えるテーマへの転換も含め研究を進める予定である。同時に過年度に行った実験データを別の観点から再分析することも検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定した実験を全て完了できず,実験関連費用に余剰が生じ,次年度に研究費を使用する必要があった。 次年度では,コロナ感染状況を踏まえつつ,対面での参加者実験が可能な時期に実験を集中して行い,過年度の実験進行の遅れを可能な限り補う予定である。また,実験が集中することに伴い,複数の実験を同時に遂行するために,実験機材の追加購入も検討し,効率的な実験実施を目指す。
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