2020 Fiscal Year Research-status Report
3つの神経伝達系の非侵襲的同時測定法を用いた統合失調症の認知機能障害の解明
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20K03490
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
白間 綾 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部, リサーチフェロー (50738127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住吉 太幹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部, 部長 (80286062)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 認知機能障害 / 瞳孔計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究1-2年度目の目的は、統合失調症における認知機能障害に関連する神経伝達系の異常を、複数の神経伝達系の働きの同時測定から明らかにすることにある。とくに1年目では、アイトラッカーを用いた瞳孔径の測定により、とくに交感神経(ノルアドレナリン、NA)系と副交感神経(アセチルコリン、Ach)系のはたらきを同時推定する手法を確立し、他の精神疾患(ADHD)患者群を対象として手法の妥当性を確認した(Shirama et al., 2020, PlosOne; Nobukawa et al., 2021, Scientific Reports)。 神経活動時系列における複雑性の低下は,さまざまな精神疾患(うつ,統合失調症,アルツハイマー型認知症等)と関連づけられる。なかでも瞳孔径の自発的変動はヒップス(hippus)と呼ばれ,青斑核の活動を反映する。異常なヒップスをもつ患者はそうでない患者と比べ,入院後1ヶ月の累積死亡率が3倍になることが知られ(Denny et al., 2008),神経系の異常を反映すると考えられる。しかし瞳孔径の制御神経系は複雑であり,これまでの解析法には限界があった。そこで本研究では,瞳孔径時系列の複雑性と非対称性を組み合わせた解析により,交感・副交感神経系,青斑核神経活動のリアルタイム推定法を作成した(Nobukawa et al., 2021, Frontiers in Physiology)。 なお解析方法の確立に関して,千葉工業大学と福井大学の研究者から協力を得た。この評価システムについては,現在,国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターと千葉工業大学,昭和大学,福井大学で特許を共同出願(特願2020-168949)を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCOVID-19の影響により人を対象とした研究の実施が難しい状況が続いた。そのため、既得のデータの複雑性解析やシミュレーション、また認知課題における人間のふるまいのモデル化とシミュレーションを中心に作業を進めた。そのため患者群を対象とした研究実施に制限はあったものの、データ解析手法の確立はむしろ当初より進展し、全体としてはおおむね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は統合失調症患者群20名程度を対象に神経心理学的な実験を実施する。具体的にはアイトラッカーを用いて、認知課題実施中の眼球運動・瞳孔径の測定を実施するほか、網膜電図の測定も同時に進める。現在、患者群数名に対して認知課題の難易度調整のための予備的実験を実施している。現在,COVID-19の影響で,研究の実施にさまざまな支障が生じており実施の遅延が予想される。
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Causes of Carryover |
本研究で購入予定であった実験刺激提示用のPCについて、他の科研費(スタート支援、研究代表者:白間綾)で購入したものを利用したため、差額が発生した。
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Research Products
(4 results)