2020 Fiscal Year Research-status Report
日本で開発された自閉症マウスの超音波コミュニケーション障害の解明
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20K03491
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 博美 北海道大学, 文学研究院, 教授 (90191832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉症マウス / 超音波 / B6.129S7-Dp1Taku / Chd8L |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト型自閉症モデル・マウスとして、内匠らが開発したB6.129S7-Dp(7Herc2-Mkrn3)1Takuマウス(以降、重複マウス)と中山らが開発したChromodomain helicase DNA binding protein 8 long isoform欠損マウス(以降Chd8L)を用いた。それぞれのマウスを2匹ずつ10~15分間対面させ、超音波発声を解析した。 [重複マウス]ヘテロの雌ペアは15ミリ秒以下の発声が増加し、100ミリ秒以上の発声が減少した。周波数が一定の発声が増加し、周波数が低下する発声は減少した。1回の発声を構成する音節数では1音節の発声が増加し、2~3音節の発声が減少した。これは、ヘテロ雌ペアのコミュニケーションが単純で貧困であったことを示している。ワイルドの雌雄ペアは初日に35~40ミリ秒の超音波発声をしていたが、徐々に長さが短縮し、最終日は20ミリ秒であった。マウスは未知の相手に関心を示す習性があるため対面初期に長い発声をし、相手が既知になる後期は発声が短縮したと考えられる。これに対し、ヘテロの雌雄ペアは初日から最終日まで25~30ミリ秒と一定であった。これは相手に対する関心が変化しなかったためと考えられる。 [Chd8Lマウス]ヘテロの雄ペアは、対面前半でワイルドの雄ペアより発声回数が増大したが、後半ではその逆になった。発声の長さでは15ミリ秒以下の発声が減少し、100ミリ秒以上の発声が増加した。発声の周波数では周波数が上昇/下降する発声が増加した。ヘテロの雄ペアは変化に富んだコミュニケーションを行っていたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子病制御研究所の共同研究者から自閉症マウスの提供を受けている。しかし新型コロナ・ウイルスの感染が広がり、実験室への入室が制限されるなどしたため繁殖計画が予定通り進まず十分な個体数を確保できなかった。実験室への入室制限により本研究の遂行にも影響があり、やや遅れた状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ペア数が十分でなくペア間のバラつきも大きかったことから、統計分析に向かないデータがあったことが問題点としてあげられる。 来年度からは研究代表者が自閉症の親マウスを飼育管理し、計画的に繁殖できるようにする。これにより十分な数の自閉症マウスを確保する。監視カメラを導入し、超音波測定と同時にマウスの行動動画を記録する。ペアが相互交渉を行っている時間帯の超音波発声をピックアップすることで、より精度の高い超音波データを得ることができる。ペア間の相互交渉と関係のない発声を除去して、統計分析に適した妥当性の高いデータを確保する。
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