2021 Fiscal Year Research-status Report
日本で開発された自閉症マウスの超音波コミュニケーション障害の解明
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20K03491
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 博美 北海道大学, 文学研究院, 特任教授 (90191832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉症 / マウスモデル / 超音波発声 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
広島大学の内匠らが開発したヒト15番染色体q11-13重複モデルマウス(以下重複マウスと表記する)及び九州大学の中山らが開発したクロマチン・ヘリカーゼDNA結合タンパク質8欠損モデルマウス(以下CHD8マウスと表記する)を実験に供した。 出生したマウスを1匹ずつ母親から分離し、5分間超音波発声を測定した。超音波の測定は生後4,7,10,13,16,19日目の6回行い、同じ個体を繰り返し用いた。被験体数はヘテロ型重複マウス4匹、その野生型マウス7匹、ヘテロ型CHD8マウス5匹、その野生型マウス13匹であった。 重複マウスでは、野生型の超音波発声回数が日齢と共に減少したのに対し、ヘテロ型は生後10日目と13日目に激増した。発声の長さでも、野生型が15ミリ秒未満の発声を頻発したのに対し、ヘテロ型は15~100ミリ秒の長い発声が増加した。周波数変調型発声の頻度では、野生型は周波数変化のない発声が多数観察された。ヘテロ型は周波数が上昇する発声が増加した。1回の発声を構成する音節数でも、野生型は1音節の発声が圧倒的に多かったのに対し、ヘテロ型は2音節や3音節の発声が多く観察された。まとめると、野生型は単音節から構成される短くて周波数変化のない単調な発声が特徴的であった。これに対してヘテロ型は、発声回数が激増するだけでなく、多音節から構成される長い発声を周波数を変化させながら行っていた。ヘテロ型が発した超音波は変化に富み、母親の注意を強く引くことができる。ヘテロ型マウスは突然母親がいなくなったことでパニックを起こした可能性がある。内匠らはヘテロ型マウスの大脳、小脳、海馬、視床下部などでセロトニンが減少したと報告しており、セロトニンの減少によって感情障害を引き起こし、パニックになったと考えられる。CHD8マウスでは、ヘテロ型と野生型の超音波発声に差異は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は複数回にわたって繁殖を行い、一定程度の自閉症モデルマウスを確保した。その結果、15番染色体q11-13領域が重複する新生仔マウスの超音波コミュニケーションに異常のあることがわかり、成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も繁殖計画を進め、できる限り多数の自閉症モデルマウスを確保する。これらのマウスが成熟した後、雄同士、雌同士、雌雄同士の個体が対面する社会的場面での超音波コミュニケーションと実際の社会行動を記録する。自閉症モデルマウスの超音波コミュニケーションと社会行動を野生型と比較して、変異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染が蔓延したため、研究成果発表を予定していた国内外の学会が中止・延期となり旅費等の支出がなかった。 次年度は国内外の学会が開催される予定で、すでに国際学会での研究成果発表を2件申請している。このうち1件は発表が決まっている。
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Research Products
(1 results)