2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03501
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
阿部 晶子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (60250205)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 左半側空間無視 / 左無視性失読 / 視線解析 / return sweep / 文の配置 / 文の構造 / 行頭の手がかり / 行頭の文字表記 |
Outline of Annual Research Achievements |
左半側空間無視患者では、横書き文を読む際に行頭文字の読み落としを認めることがある。健常者では横書き文の改行時、return sweep(行かえ)と呼ばれるサッケードが行末から行頭近くに達するのに対し、左半側空間無視患者ではreturn sweepが行頭よりも右側で終わることが知られている(Karnath & Huber, 1992)。2022年度は、横書き文を音読する際の視線の動きに、文の配置と構造が与える影響の検討を継続するとともに、行頭の手がかり及び文字表記が与える影響の検討を新たに開始した。 1)横書き文を音読する際の視線の停留位置に文の配置と構造が与える影響の検討 データを増やすとともに、分析方法の見直しを行い、以下の成果を得た。①文の構造の違いは、return sweepの開始位置と終了位置の差を生じるが、return sweepの大きさの差は生じない。②文の構造の違いは、視線が最も左方で停留する位置(以下、最左停留位置)の差を生じず、return sweepの終了位置が行頭から遠い場合には、停留位置の修正(修正サッケード)が多く行われる。③文の配置の違いは、return sweepの大きさと最左停留位置の差を生じる。④左側に配置された文を読む場合には、より大きなreturn sweepが生じる。⑤左無視性失読を呈する患者が左側に配置された文を読む際には、改行後の視線は行頭よりも右寄りで停止し、より多くの修正サッケードが行われる。⑥左半側空間無視患者は、左無視性失読が明らかでなくても、改行時の視線移動は健常者とは異なる。以上の成果は、研究協力者とともに日本心理学会第86回大会および第46回日本高次脳機能障害学会にて発表した。 2)横書き文を音読する際の視線の動きに行頭の手がかり及び文字表記が与える影響の検討 新たな音読課題の作成と健常者を対象とした予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)横書き文を音読する際の視線の停留位置に文の配置と構造が与える影響の検討 2022年度は、左半側空間無視患者と健常者を対象に、横書き文を音読する際の視線の停留位置に文の配置と構造が与える影響を検討し、成果を研究協力者とともに日本心理学会第86回大会および第46回日本高次脳機能障害学会にて発表した。2020年度中に追加の分析を行い、論文執筆を行う予定であったが、研究代表者の体調不良により進行がやや遅れた。 2)横書き文を音読する際の視線の動きに行頭の手がかり及び文字表記が与える影響の検討 音読課題の作成と健常者を対象とした予備実験を行った。2022年度中に本実験を開始する予定であったが、研究代表者および研究協力者の体調不良により進行がやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は研究代表者および研究協力者の体調不良のために研究の進行がやや遅れた。研究代表者の体調が回復次第、以下の方針で研究を推進する。 1)横書き文を音読する際の視線の停留位置に文の配置と構造が与える影響の検討 2022年度中に行う予定であった追加のデータ分析を行い、論文執筆・投稿を行う。 2)横書き文を音読する際の視線の動きに行頭の手がかり及び文字表記が与える影響の検討 2022年度に行った予備実験の結果から、被験者が音読時に行頭の手がかりをどの程度意識したかによって、改行時の視線の動きが異なる可能性が推察された。今後、課題に若干の改良を加えた上で本実験の実施およびデータ分析を進め、成果報告ができるよう努力する。
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Causes of Carryover |
2022年度は実験に必要なノートパソコンの購入、および学会参加費および旅費に助成金を使用した。2022年度までの予算の執行率は91.2%であり、生じた次年度使用額は大きくない。残額は来年度の実験で必要となる消耗品に充てる予定である。
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Research Products
(11 results)