2020 Fiscal Year Research-status Report
非可換代数曲面の分類を目的とした代数学の融合的研究
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20K03510
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
毛利 出 静岡大学, 理学部, 教授 (50436903)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環論 / 非可換代数幾何学 / 非可換射影空間 / 非可換射影曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
非可換代数幾何学という研究分野は1990年代に始まった大変新しい数学の分野で、現在欧米を中心に活発に研究されています。代数幾何学における重要な研究課題の一つは低次元代数多様体を分類することです。同様に非可換代数幾何学においても低次元非可換代数多様体を分類することが最重要課題となっています。実際非可換代数幾何学は非可換射影平面の斉次座標環であるところの3次元AS-regular代数の分類問題に始まったといってよいでしょう。その後非可換射影曲線の分類は完成されましたので、次なる目標として私は高次元非可換射影空間や非可換射影曲面の研究・分類に取り組んできました。令和2年度の主な研究成果は次の通りです。 1. 東京理科大学の板場綾子氏との共同研究で、非可換射影平面が中心上有限生成になるための必要十分条件を幾何的に判定することに成功しました。またこの研究成果を論文にまとめて学術誌に投稿することができました。 2. 非可換射影2次超曲面は非可換代数幾何学の重要な研究対象ですが、その最も単純な場合である非可換射影2次曲線の研究を指導学生と共同で行い、Calabi-Yau非可換射影平面に埋め込むことのできる非可換射影2次曲線を完全に分類することに成功しました。またこの研究成果を論文にまとめることができました。 3. 令和元年度にアメリカ西ワシントン大学のAdam Nyman氏との共同研究で、AS-regular Z代数の性質を研究し論文にまとめて投稿していましたが、その論文が代数学の学術誌として評判の高いJ. Pure Appl. Algebraに出版されることになりました。令和2年度も引き続き共同研究を行いAS-regular Z代数を斉次座標環とする非可換射影空間を圏論的に特徴づけることに成功しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度はコロナ禍の影響で国内外ともに出張が一度もできませんでしたので、研究遂行に必要な情報交換が十分に行えたとはいえず、当初予定していた研究計画に関してはやや遅れているといえます。しかしながら令和2年度後半には急遽学内の指導学生と共同研究をすることにしたため、当初予定していたよりも研究を進めることができたところもあります。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は引き続きコロナ禍の影響があることを想定して次のような研究課題に取り組む予定です。 1. 引き続き指導学生と共同研究を行い、3次元AS-regular代数や非可換射影2次曲面の研究・分類を行います。 2. 引き続きアメリカ西ワシントン大学のAdam Nyman氏と遠隔で共同研究を行い、これまでに得られた研究成果を論文にまとめて学術誌に投稿します。 3. 東京大学の植田一石氏と大阪大学の大川新之介氏と共同研究を行い、射影直線上の非可換線織曲面として定義される非可換Hirzebruch曲面の研究を完成させます。
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Causes of Carryover |
令和2年度には二つの海外の研究集会から講演者として招待されていましたが、それらの研究集会は二つとも令和4年度に延期されました。その他の国内外の研究集会もすべて中止・延期・遠隔になったため、当初予定していた出張費や報告集印刷・郵送費などが一切必要なく、令和2年度の本研究費の支出実績はありません。しかしながら令和3年度は国内での出張が可能となることを期待しており、出張費が必要となる予定です。また令和2年度から令和3年度に延期された研究集会の報告集印刷・郵送費などに本研究費未使用分を使用する予定です。出張が自由にできない状況が続いた場合は、研究遂行に必要な知識を持った学術研究員を雇用することも考えており、それに本研究費未使用分を使用したいと思います。
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