2021 Fiscal Year Research-status Report
高種数テイト曲線の周期の理論とベクトル値タイヒミュラー保型形式の数論
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20K03516
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
市川 尚志 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20201923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄田 敏宏 関西大学, システム理工学部, 教授 (10432957)
中村 健太郎 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (90595993)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 代数曲線 / アーベル微分 / 周期積分 / ソリトン解 / 準周期解 / テイト曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
テイト曲線とは、有理整数を係数とする巾級数環上で定義された楕円曲線の族であり、数論幾何のさまざまな分野で応用されている。研究代表者は以前の研究において、テイト曲線の高種数化である「高種数テイト曲線」を構成し、その座標環上での展開を用いて、タイヒミュラー空間上の保型形式「タイヒミュラー保型形式」の理論を与えていた。本研究においては、高種数テイト曲線の周期積分とタイヒミュラー保型形式の理論を、互いに関連づけながら発展させることを目標としている。 まず高種数テイト曲線上のアーベル微分として「普遍アーベル微分」の明示公式を導き、その応用として、今までリーマン面に対し解析的な方法によって得られていたアーベル微分の漸近公式を、数論幾何的な方法を用いてマンフォード曲線を含んだ形で拡張した。ソリトン解を持つ非線形偏微分方程式の代表例であるKP階層の準周期解は、タイヒミュラー保型形式の重要な例を与えるが、上記の漸近公式を用いることによりこの準周期解の退化について研究し、準周期解とソリトン解の混合物として表されるKP階層の解の一般的な表示を得た。 さらに与えられた種数を持つ任意のマンフォード曲線とショットキー一意化されたリーマン面を導く「普遍マンフォード曲線」を、すべての退化データに対応する高種数テイト曲線を糊付けすることによって構成し、そのアーベル微分と周期積分の明示公式を与えると共に、周期積分の代数的対応物である普遍ヤコビ多様体とそのコンパクト化を構成した。また普遍アーベル微分の高次化として構成された標準高次微分を用い、研究代表者による以前の成果を拡張する形で、リーマン・ロッホ同型写像とマンフォード形式の無限積表示を与えた。さらにアーベル積分の非可換化として、普遍マンフォード曲線上の巾単周期の理論を構成し、その漸近的な明示公式を多重対数関数や多重ゼータ値を用いて与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標を順調に達成すると共に、普遍マンフォード曲線の理論について新たな展望を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
普遍マンフォード曲線の理論を整備し、代数曲線の族における高次微分・積分への応用を与えることを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大により研究出張ができず、対面での研究交流の時間の確保が難しかったことにより、次年度使用額が生じた。今後は研究促進に必要な専門書と電子機器の購入、可能な場合は出張等による研究交流に使用することを計画している。
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