2021 Fiscal Year Research-status Report
ゼータ関数を用いた符号と不変式および暗号の数論的構造の研究
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20K03524
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
知念 宏司 近畿大学, 理工学部, 教授 (30419486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゼータ関数 / 線型符号 / 不変式論 / 整数論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、線型符号の重み多項式に関する課題において研究を行ない、一定の成果が得られた。それは、自己双対重み多項式のゼータ関数のリーマン予想に関するものである。先行研究として、種数が3未満の重み多項式のゼータ関数のリーマン予想について、一つの必要十分条件を与えたものがあった(Nishimura, 2008)。この結果のさらなる拡張を試み、種数が3および4の場合に、類似の必要十分条件が得られた(Chinen-Imamura, 2021)。われわれの結果は、手法の面でも先行研究と大きな違いがある。先行研究では、証明にゼータ関数の定義と binomial moment の公式が用いられていたが、その代わりとして、われわれは、もとの重み多項式と「MDS 重み多項式」とが、ゼータ多項式の係数を通じて結び付けられるという事実(これ自体は既知)を用いた。これが従来の手法との大きな違いであり、その結果、証明は格段に見通しよくなり、簡易化された。そのため、種数3および4まで進むことができたのである。なお、この手法は種数3未満の場合にも適用でき、先行研究の結果に対する簡明な別証明を得ることにも成功した。今回の新しい結果により、各種の重み多項式の具体例について、リーマン予想の成立、不成立について調べることができた。それらは、次数 16 の III 型 extremal 重み多項式、次数 8, 12 の、q=4/3 に対するマクウイリアムズ変換で不変な多項式の一部、(x^2+(q-1)y^2)^m の形のいくつかの多項式などである。他に、各種数値実験の結果により、いくつかの予想に到達した。そのうちの1つは、(x^2+(q-1)y^2)^m の形の多項式においては、m に対して 1 に十分近い q を選べば、リーマン予想が成り立つのではないか、というものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究のさらなる拡張に成功し、先行研究自体にも別証明、しかも著しい簡易化が得られたことで新しい角度からの考察が可能となった。さらに新しい問題も見つかっている。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行なった研究によって、自己双対重み多項式のゼータ多項式に関する新しい問題が得られている。今後その問題を解決し、それをもとに、すでに見つかっている、やや例外的な具体例の背景を探ることを目標に、次年度以降の研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は旅費を中心として多少の節約ができたため、次年度使用額が生じた。次年度においては、研究に必要な計算機関係消耗品、図書、研究発表旅費などに、この金額および次年度の経費の一部を充当する計画である。
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Research Products
(1 results)