2022 Fiscal Year Research-status Report
Mathematics on Calabi-Yau manifolds and related topics
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20K03530
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桂 利行 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任教授 (40108444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Coble曲面 / 正標数 / quadratic line complex / Kummer曲面 / 代数曲線 / Jacobi多様体 / Grassmann多様体 / K3曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
Sを非特異完備代数曲面、Kをその標準束とする。完備線形系|-K|が空集合で|-2K|が互いに交わらないいくつかの非特異射影直線からなる時、SはCoble曲面であるという。金銅誠之との共同研究として、標数2における自己同型群が有限なCoble曲面をとりあげ、まずconductrixを分類し、その結果とCoble-Mukai格子を利用して、これらの曲面がnodal曲線のconfigurationによって7種類に、境界因子の個数を考慮すると9種類に分類できることを示した。また、各類に属するCoble曲面が存在することも示した。投稿していたCoble曲面に関するこの論文が本年度日本数学会のジャーナルに受理された。引き続き金銅誠之と共同で、19世紀末にKleinによって複素数体上考察されたquadratic line complexを標数2において研究した。種数2の代数曲線Cの超楕円曲線構造の分岐点は標数が2以外の時は6個で一定であるが、標数2の時は分岐点が1個から3個の3種類になり、その個数はCのJacobi多様体のp-rankに対応している。quadratic line complexを構成するGrassmann多様体ではない方の2次超曲面は、標数2の場合交代形式と対応するが、このJordan標準形は3個あり、そのそれぞれが構成された種数2の代数曲線のJacob多様体のp-rankと対応するという興味深い結果を得た。種数2の代数曲線の具体的な方程式も2次曲面の係数を用いて具体的に書くことができる。さらにそれから構成されるKummer曲面の方程式を計算し、そこに含まれる射影直線(trope)のなすconfigurationを決定した。また、特異点をもつKummer曲面を5次元射影空間の中の3つの2次式の完全交差として記述した。これらの結果を論文にまとめて投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染症の蔓延によって特に海外の研究者との共同研究の進行がこれまで遅れており、そのツケが本年度も残っていたが、金銅誠之名古屋大学教授と共同研究を進めていた有限自己同型群をもつCoble曲面の分類に関する51ページの論文がJ. Math. Soc. Japanに受理され、さらにこれも金銅誠之名古屋大学教授と共同研究として進めていたquadratic line complexの構造を標数2において解析する研究が進み、論文が完成し投稿することができたので、おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
投稿中のquadratic line complexの論文については、レフリーのレポート結果によっては指摘に従って改訂版を作成する。ここに現れる(特異点を有する)Kummer曲面は5次元射影空間の中で3つの2次超曲面の完全交差となるが、2つの2次超曲面と超平面の完全交差として4次のdel Pezzo曲面が現れる。この曲面を巡ってもKummer曲面と同様の幾何学を展開することがきることがDolgachevによって指摘されており、本年度はこの構造解析を行う。また、準楕円曲面の構造を持つEnriques曲面は加法群の非分離形式と関係しており、準楕円曲面構造の相対的Jacobi多様体のMordell-Weil群と準楕円曲面構造に付随する超楕円曲線のHasse-Witt行列の関係に関するDolgachev予想を研究する。高次元については、正標数の3次元のCalabi-Yau多様体上の微分形式の存在問題や標数0への持ち上げ問題もこの研究計画の研究テーマとして取り上げる。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響で、とくに海外の研究者との共同研究を対面で行うことができず、海外の研究協力者との共同研究が滞り申請していた旅費の執行ができなかった。国際会議や研究集会もオンラインで行われたことが多く、研究発表のための出張の機会が激減していたため旅費を使用する機会が少なかった。本年度は秋にイタリアのCetraroでの国際会議で研究成果を発表する機会がある予定で、またこの3年間の研究の総まとめとして、これまで実行することが難しかった研究協力者の方々との対面での討論を行い研究を遂行する。
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[Book] 楕円曲面2022
Author(s)
桂 利行
Total Pages
244
Publisher
岩波書店
ISBN
978-4-00-029830-8