2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of universal families over moduli spaces based on geometry of group actions
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20K03533
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高村 茂 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20362436)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 群作用 / 部分群ポセット / 軌道ポセット / ポセット・ブローダウン / コセット・モノイド / 部分群モノイド / ハッセ図 / 群作用変形族 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)有限群に対し、その部分群たちの間の包含関係はハッセ図というグラフによって記述される。有限群作用を考える上で、このグラフの形状が大きな制約を与えていることに着目して、逆問題を提示し、考察した(これは今まであまり考察されたことのない問題である)。すなわち、与えられた形状のグラフをハッセ図として持つ有限群は存在するか?また、もし存在する場合はそれらを分類せよ、という問題である。グラフが「鳥かご状」のときに、そのようなハッセ図を持つ有限群を完全に分類した(これらは鳥かご群と称せられる)。この結果は論文``Classification of finite groups with birdcage-shaped Hasse diagrams''にまとめた(Osaka Journal of Mathematics に掲載決定)。
(2)代数幾何におけるブローダウンの概念に動機づけられて、群論においてその類似となる概念を導入した。正確に言うと、部分群ポセットに対し、ポセット・ブローダウンという概念を導入した。これは、異なる群の部分群ポセットの間の幾何的な関係を探るために有用な道具である。また、有限群の場合は、ハッセ図の間のグラフ写像になっている。これを3つの型(従順型、野性型、混合型)に分類し、従順型である有限群を完全に決定した。この結果は論文``Blowdown maps between subgroup posets''にまとめたうえ投稿した。レフェリーからのコメントに沿って手直ししたものを再提出済みで、現在結果待ちの状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
群作用幾何を下支えするインフラとして、高次の部分群ポセットの構成に向けての準備を整えることができた。また、群に対して、その構造の``テーラー展開''というべきものを具現化したコセット・モノイドを導入し、さらにコセット積の「分裂」に基づくコセット・モノイド構造の記述法やコセット・モノイドのケーリーグラフを導入することができた。また、与えられた群の各部分群に対し、コセット半群を定義し(これはコセット・モノイドの部分半群になっている)、与えられた群作用に対し、その商群作用を自然に一般化したコセット半群作用を導入した。これが作用する`空間'に相当する「軌道ポセット」は等質空間を包括的に一般化するひとつの枠組として興味深く、有望な研究対象と考えられる。また、コセット半群作用は、部分群ポセット上の「変形族」として実現され、 商群作用たちの、いわばミッシング・リンクだった部分がこれにより定式化され、変形族に実装された。ここまでの定式化が今後の発展のカギとなるため、順調に研究が進展していると言っていいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
群作用幾何に応用するために、次の方向の研究をさらに推し進める予定である。
(i) 部分群ポセットの「高次化」というべきものを導入し、それらの性質を調べる予定である。高次の部分群ポセットは、直感的に言うと、部分群だけでなく、部分群積やコセット積を次数ごとに考えたものである。すべての次数にわたって「一斉に」考え、さらにポセット・ブローダウンでそれらを関連付けることは、いわば群のコセット構造に関する``テーラー展開''たちを(圏論的に)考えていることに相当する。これにより部分群ポセットを見ているだけでは得られない情報が取り出せるのでは、と期待している---この研究方向は、非可換幾何学的なものを予感させる。また、コセット・モノイドのケーリーグラフは非常に複雑であるが、部分群やコセットたちの間の「メタな」関係式をサイクルとして持つので、幾何と代数が交錯する対象といえ、両方の側面から考察していきたい。
(ii) 「コセット半群」や「コセット・モノイド」を具体的な群(とくに有限群や離散群、さらに写像類群)の場合に調べてみることを計画している。そのプロセスで、これらの概念の意義がはっきりすることが期待されるとともに、いろいろな計算テクニックを発展させる必要が出てくると思われる。また、コセット半群やコセット・モノイドの作用する「軌道ポセット」を具体的な場合に調べて、この概念を``深化''させていきたい。モジュライ空間への応用を見込んで、写像類群のタイヒミュラー空間への作用の場合に適用して調べることが長期的な目標である。
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Causes of Carryover |
参加した研究集会がオンライン開催になったため、旅費に余剰が生じた。そのため、次年度に行われる研究集会への旅費に回すことにした。
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