2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K03534
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平賀 郁 京都大学, 理学研究科, 講師 (10260605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エンドスコピー / 簡約代数群の被覆群 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、分裂していない簡約代数群の被覆群のエンドスコピーについては、一般にはエンドスコピーの理論が存在するかどうかも分かっていない。そのため、本研究では簡単な群の場合から研究を行うこととし、令和3年度までの研究に続けて令和4年度も GL(2) の内部形式である四元数体の乗法群の偶数次の被覆群のエンドスコピーについて研究を行った。 令和3年度までの研究代表者の研究により、定義体の剰余標数 p が奇素数で1の4乗根を含んでいる場合には、分裂していない四元数体の乗法群の被覆群に対して局所的な問題の主要部分が解決されていた。令和4年度は、この研究を元に、跡公式を用いて、定義体の剰余標数 p が奇素数で1の4乗根を含んでいる場合に、分裂していない四元数体の乗法群の被覆群に対してエンドスコピーの研究を行った。この研究により、この場合には、エンドスコピー群から四元数体の乗法群の偶数次の被覆群への表現の持ち上げが存在することを示すことができた。つまり、この場合にはエンドスコピーの理論が存在していることになる。この研究は、一般に、分裂していない簡約代数群の被覆群に対してもエンドスコピーの理論があることを強く示唆している点で重要である。 また、既約許容表現のエンドスコピー的持ち上げにおいて、既約許容表現の中心指標と内部形式の定めるハッセ不変量とが関係していることが分かった。簡約代数群のエンドスコピーにおいては、ハッセ不変量と関係するのは S-群の中心指標であり、既約許容表現の中心指標がハッセ不変量と関係しているという現象は被覆群のエンドスコピーが簡約代数群のエンドスコピーとは異なっている点であり、とても興味深い。このような現象はこれまで知られていなかったと思われ、被覆群のエンドスコピーの理論のありかたに重要な示唆を与えるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、これまでも四元数体の乗法群の偶数次の被覆群のエンドスコピーについて研究を行ってきたが、この場合はこれまで研究されてきたことがほとんど無かったこともあり、研究がなかなか進まない状況であった。特に、エンドスコピーの理論において重要な移送因子の定義に関わるところに難点があり、ここの研究を進展させることが課題となっていた。しかし、本研究課題の遂行の前に、研究代表者は問題を特別な被覆群の構造に帰着させることができることを見出し、この特別な被覆群の構造の解明を本研究課題の最初の目標とした。 本研究においては、令和3年度までの2年間に、定義体の剰余標数が奇素数で1の4乗根を含んでいれば、この特別な被覆群が本質的に分裂することを示すことができた。令和4年度においては、この研究成果をもとに、定義体の剰余標数が奇素数で1の4乗根を含んでいる場合に、エンドスコピー群から四元数体の乗法群の偶数次の被覆群への表現の持ち上げが存在することを示すことができた。 今の段階では剰余標数が 2 の場合の研究が残っているが、本研究課題としてはおおむね順調に進展しているのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、令和4年度までに、定義体の剰余標数が奇素数で1の4乗根を含んでいる場合に特別な被覆群の構造を決定し, この場合にエンドスコピー群から四元数体の乗法群の偶数次の被覆群への表現の持ち上げが存在することを示すことができたが、剰余標数が2の場合には特別な被覆群の構造を決定することができていない。そのため令和5年度には、剰余標数が2の場合に特別な被覆群の構造を研究することを予定している。また、剰余標数が2の場合の研究が進めば、大域的なエンドスコピーについても研究を行うことを計画している。 また、研究の進展に伴い、局所・大域のどちらにおいても、四元数体の乗法群のノルム1の部分群の偶数次の被覆群のエンドスコピーについて研究を行なっていく予定である。 一方で、分裂するとは限らない一般の簡約代数群の被覆群のエンドスコピーについて理解するには、他の簡約代数群の被覆群のエンドスコピーについても研究する必要があると思われる。四元数体の乗法群の場合の研究が進展すれば、一般の場合の理解の為に、もうすこし大きな簡約代数群、例えば、n が3以上の GL(n) の内部形式の被覆群のエンドスコピーについて研究を進めていく計画である。現在のところは、特に n が3、4、6の場合が興味深いのではないかと期待しているが、研究の進展により、これらの場合のエンドスコピーについての理解が進んでいけば、他の簡約代数群の被覆群についても研究を行うことを考えている。 また、研究の進展状況によっては、これらの群の保形表現と関係した不変量についても研究を行っていくことを考えている。
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Causes of Carryover |
前年度まで、国内外の研究集会等が休止やオンラインとなったり、流通に混乱が生じたりした影響があり、使用計画を変更せざるを得なかったが、本年度もこれまでの使用計画の変更にともない、予定の変更が必要となった。 次年度も当該年度に引き続き四元数体の乗法群の偶数次の被覆群のエンドスコピーについて研究を行う予定にしており、翌年度分として請求した助成金と合わせて、研究に必要な文献の購入やパソコン等の環境の整備や研究集会等が再開された場合には旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)