2021 Fiscal Year Research-status Report
Mixed Hodge theory on non-reduced log smooth degenerations
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20K03542
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
藤澤 太郎 東京電機大学, 工学部, 教授 (60280385)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 混合ホッジ構造 / 対数幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず最初に、セミステイブルな対数的スムース退化に関する従前の研究成果を整理して "Limiting mixed Hodge structures on the relative log de Rham cohomology groups of a projective semistable log smooth degeneration" を執筆・投稿した結果、2021年度の9月に "Kyoto Journal of Mathematics" に掲載が決定されたことを報告しておきたい。 さて、2020年度の実績報告書にも記したように、2021年度は、「完全(exact)」の仮定の下で彼約でない対数的スムース退化について研究を進めた。一般の完全な対数的スムース射については、既に、イリュジー・加藤・中山の優れた先行研究があるが、そこでは ket site の理論が不可欠の道具として使われている。本研究においては ket site を用いることなく、直接に、相対対数的ドラームコホモロジー複体について調べる必要があり、イリュジー・加藤・中山の結果を参照にしながら、考察を進めた。その結果、以前に得られていた相対対数的ドラームコホモロジー複体に関する結果を、今回の研究にも応用できることが分った。これにより、完全な対数的スムース退化の相対対数的ドラーム複体の構造をかなり精密に把握することができた。 上記の結果に続けて、完全な対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群上に混合ホッジ構造を構成することに考察を進めたが、やはり、セミステイブルな場合に比較して、相対対数的ドラーム複体の構造が複雑であるため、そのコホモロジー群上に混合ホッジ構造を構成することは簡単ではないことが判明した。現在、その困難を克服し、如何にして混合ホッジ構造を構成するか研究を進めている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、完全(exact)という仮定の下で対数的スムース退化を調べることから始めた。年度当初は、相対対数的ドラーム複体に関する以前の結果を応用することが可能であることが判明し、それによって相対対数的ドラーム複体の構造を精密に把握することが可能になる等、順調に研究が進捗していきものと予想された。しかし、セミステイブルな場合とは異なる相対対数的ドラーム複体の複雑さ故に、その後の研究の進展は予想に反するものとなった。 完全な対数的スムース退化の相対対数的ドラーム複体と、その彼約化のそれとを比較して考察する、という計画当初の方針に従って研究を進めたが、二つの相対対数的ドラーム複体の差を、混合ホッジ理論の中でどの様にとらえればよいのかが分らないまま手探りの状態が続いている。さらに、当初の研究計画では、相対対数的ドラーム複体上の積およびトレース射について考察を進める予定であったが、こちらも同様に、相対対数的ドラーム複体の複雑さ故に思うような進展が得られていない。 最後に、外的な要因ではあるが、2021年度についても新型コロナウイルス感染症対策に伴なう大学業務負担の増加を挙げなければならない。感染状況や社会情勢の変化のため、2021年度も年度途中での講義方法の変更等、従来とは異なる様々な対応が必要となった。そのために、研究時間を十分に確保することが難しく、それが研究の進捗状況に影響を与えたことは否定できないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、完全(exact)という仮定を付けた上で彼約でない対数的スムース退化の相対対数的ドラーム複体を調べた。2022年度もまずは、完全という仮定の下で研究を進める予定である。 2021年度の研究結果により、完全な対数的スムース退化の相対対数的ドラーム複体の構造はかなり精密に理解できたゆえ、彼約化の相対対数的ドラーム複体と比較しながら、混合ホッジ理論をどの様に展開すればよいかについて考察する。その際には、代数幾何学で良く用いられる、底空間の分岐被覆をとる方法を対数的点上でも考えることがヒントになるものと期待している。この方法はモノドロミー条件とも関連する重要な手法であると考えている。さらには、代数多様体の射に関するセミステイブル還元(semistable reduction)定理等も参考にした上で研究を進める。 一方、併行して、トレース射の構成についても研究を進める予定である。完全性を仮定した場合、相対対数的ドラーム複体の単体的解消(simplicial resolution)に現れる複素多様体は、一般の場合とは異なり、より扱い易い条件をみたしている。そこからトレース射を構成するための手掛りが得られるものと想定している。トレース射が構成できた後には、当初の計画に従い、双対性の考察へと研究を進める予定である。さらに、完全性の仮定を外した一般の対数的スムース退化についても可能な限り研究を進めたい。 これらの目標を達成するためには、これまでの代数幾何学の知見のみでなく、ホッジ構造の変動の理論や(混合)ホッジ加群の理論等、より幅広い代数幾何学の諸結果を参考にすることが必要不可欠であると考えられ、これまで以上に情報収集に努めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度同様、2021年度も新型コロナウイルス感染症のため学会・研究集会等はほとんどがオンライン開催となった。また、海外への渡航もほぼ不可能であった。そのため2021年度も、予定していた出張旅費を全く使用しないまま終了した。 2022年度は、新型コロナウイルス感染症が流行する以前の状態にある程度戻るであろうことが予想され、可能な限り国内の学会、研究集会に参加して、本研究に関連するホッジ理論および代数幾何学に関する新しい知見を吸収することに使用する予定である。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行状況、あるいはそれに対する社会の状況によっては、海外渡航も可能となることが見込まれる。可能ならば、海外の研究集会への参加も検討したい。 一方、学会、研究集会やセミナー等のオンライン開催が常態化した流れは2022年度も大きく変わることはないと想像される。さらに書籍や論文といった文献の電子化もますます加速されており、この様な状況下にあって、学会等に参加するためにも、あるいは自身が研究成果を発表するためにも、また、文献を収集・整理して研究に役立てるためにも、今やデジタルデバイスは必須のツールである。今年度使用額の一部をその整備のために充当することを予定している。
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Research Products
(1 results)