2022 Fiscal Year Research-status Report
Mixed Hodge theory on non-reduced log smooth degenerations
Project/Area Number |
20K03542
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
藤澤 太郎 東京電機大学, 工学部, 教授 (60280385)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | mixed Hodge structure / log geometry |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に引き続き、今年度も「完全(exact)」の仮定の下で彼約でない対数的スムース退化について研究を進めた。2021年度には、彼約でない完全な対数的スムース退化の相対対数的ドラーム複体について、以前の研究をさらに深めることができた。そこで今年度は、2021年度に引き続き、上記の結果に基づいて相対対数的ドラームコホモロジー群上に混合ホッジ構造を構成することを目指して研究を行なった。 本研究の基本的な方針は、彼約でない対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群とその彼約化の相対対数的ドラームコホモロジー群を比較する、というものであったが、想定していた以上に、この比較が困難であったため、結局、混合ホッジ構造の構成に成功するには至らなかった。 一方、彼約でない対数的スムース退化に完全という仮定を付けた場合、セミステイブルな対数的スムース退化との違いは、対数的スムース退化の既約成分が重複度を持つことでる。(本報告では便宜上、このような対象を弱セミステイブルな対数的スムース退化と呼ぶことにする。) 藤野修京都大学教授との共同研究の中で、スティーンブリンクによる過去の研究(Mixed Hodge structure on the vanishing cohomology, 1976)を精査する必要が生じたが、それを行なう過程で、弱セミステイブルな対数的スムース退化を調べる場合にも、基底変換によってセミステイブルな場合に帰着することが有効ではないかという示唆を得た。この共同研究における対数幾何に関連した部分を、藤野氏との共著論文の一部分としてまとめたが、これは、今後本研究を進める上での手掛かりの一つと位置付けられる結果であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度も、2021年度に引き続き完全(exact)という仮定を付けた上で彼約でない対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群に混合ホッジ構造を構成することを目指して研究を続けた。これまでの研究によって相対対数的ドラーム複体の構造についてはかなり詳しく把握できているものの、その後の研究の進展は、現在まで予想に反して厳いものとなっている。 彼約でない対数的スムース退化のドラームコホモロジー群をその彼約化の対数的スムース退化のドラームコホモロジー群と比較することにより混合ホッジ構造を構成する、というアイデアが本研究の基本方針であるが、実際にどの様に定式化すれば上手く理論が構築できるのか依然として手探り状態が続いている。これまでの研究により、局所的には相対対数的ドラーム複体の構造も局所的にはかなり詳細に判明しているが、その情報を何如にして上手く大域的な情報であるコホモロジー群の構造に結び付けて定式化すれば良いのか、中々方向性を見出すのが難しいのが現状である。 一方で、相対対数的ドラームコホモロジー群上に積およびトレース射を構成するという方向性についても想定していたようには研究は進展しなかった。その原因は、彼約でない対象を考察しているため、(当然のことではあるが)各既約成分が重複度を持っており、それに起因して計算が複雑になるためである。彼約な対象であるセミステイブルな対数的スムース退化の場合でさえ、積やトレースを定めるための計算は非常に複雑であったが、さらに重複度までコントロールした上で計算を進めなければならず、決定的な結果を得られるような状況には残念ながら至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度も、まずは「完全(exact)」という仮定の下で研究を進める予定である。2020年度から2022年度まで本研究の基本方針は、彼約でない対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群を、その彼約化の対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群に結び付けて考察するというものであった。しかし、残念ながら、現在まで目標である混合ホッジ構造の構成にはなお隔たりがある状況である。 そこで2023年度は、あらたに基底変換によって彼約な場合に帰着するという方法も併せて研究を進める予定である。こちらの方向性は、当初からある程度視野には入れていたものの、上記彼約化との比較という方法があくまで本課題の研究計画の中では本筋であった。しかし、2022年度に行なった藤野氏との共同研究の過程で、こちらの基底変換の方法も有力であるとの感触を得たことにも鑑み、こちらの方法も併せて考察を進める予定である。 まずはスティーンブリンクの結果(Mixed Hodge structure on the vanishing cohomology, 1976)を、底空間が高次元の場合に一般化することから始める。さらに、その過程で得られた議論を対数幾何の枠組に取り込むことで、弱セミステイブルな対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群に混合ホッジ構造を構成することを目指す。さらには、積やトレース射の構成という本研究の他の目標に関しても、この基底変換の手法を用いることができるかどうかについて研究を進めたい。そのためにはオービフォルド上の(混合)ホッジ理論について過去の研究を精査し、さらにはオービフォルド上の強レフシェッツ定理についても考察する予定である。
|
Causes of Carryover |
2022年度も、2020年度・2021年度に続き、新型コロナウイルス感染症のため学会、研究集会等の多くがオンライン開催、あるいは対面とオンラインを併用するハイブリッド開催となった。また、海外の研究集会等に参加することは依然としてあまり簡単ではない状況が続いた。そのため、2021年度に引き続き今年度も予定していた出張旅費を全く使用しないまま終了することとなった。 2022年度後半からは、次第に新型コロナウイルス感染症が流行する以前の状態に戻りつつあり、対面(のみ)で開催される研究集会等も増えてきている。2023年度には、国内の学会、研究集会に参加して、本研究に関連するホッジ理論および代数幾何学に関する新しい知見を吸収することに使用する予定である。また、海外渡航についても、社会状況はコロナ流行以前の状況に戻りつつある。予算額が限られているため難しいかもしれないが、可能ならば海外の研究集会等への参加も検討したい。 一方、2022年度には、本学でも最近整備されたバイアウト制度を利用して研究時間の確保を試みた。2023年度も同様にバイアウト制度を積極的に活用して研究時間の確保を目指すことを計画している。研究の遅れをとり戻すためにも研究時間の確保は極めて重要であり、バイアウト制度が利用できることは非常に意味があると考える。
|