2022 Fiscal Year Research-status Report
分岐被覆と偏極アーベル多様体の幾何による周期写像の研究
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20K03543
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
池田 京司 東京電機大学, 工学部, 教授 (40397617)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プリム多様体 / 代数曲線 / 分岐被覆 / アーベル多様体 / テータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
代数曲線の分岐被覆に対し,プリム多様体とよばれる偏極付きアーベル多様体が定義される.前年度までの研究で,プリム多様体と偏極を定めるある因子の組から元の代数曲線の分岐被覆を再構成することができることを示ていた.一方、一般の偏極アーベル多様体は代数曲線の分岐被覆とはならない.そこで令和4年度は、どのような偏極アーベル多様体が代数曲線の分岐被覆になりうるかという研究を行った.代数曲線の分岐2重被覆のプリム多様体はその双対アーベル多様体上にある条件を満たす代数曲線を含むため,この幾何的な条件を満たさないアーベル多様体はプリム多様体になりえないことを示した. また,偏極アーベル多様体の周期行列によりプリム多様体を特徴づける研究も進めた.主偏極アーベル多様体の中で,超楕円曲線のヤコビ多様体となるものをその周期行列のテータ定数を用いて特徴づけるMumfordによる結果が知られている.この研究に倣い,プリム多様体の周期行列が定めるテータ関数の性質を調べた.令和2年度の研究で,代数曲線の2重被覆に現れる2つの曲線のヤコビ多様体の指標付きテータ関数と、対応するプリム多様体の指標付きテータ関数の関係を具体的に記述していた.これにより,楕円曲線の2重被覆の場合に,プリム多様体の偏極が定める線形系の基点集合上にあるプリム多様体の2等分点を完全に決定することができた.逆にこの条件を満たす偏極アーベル多様体がプリム多様体となることを示すため,この条件を満たす偏極アーベル多様体の周期行列について,指標付きテータ関数が満たすいくつかの関係式を求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代数曲線の2重被覆のプリム写像の単射性に関する研究については,本研究において弱い形の結果が得られていたが,別の研究者らにより強い形の成果が発表された.同じ結果を本研究のアイデアにより別証明が可能かどうかは未解決である. 偏極アーベル多様体のなかで,代数曲線の2重被覆のプリム多様体となるものが満たすべき条件を定式化することはできた.一方で,逆にその条件を満たす偏極アーベル多様体が代数曲線の2重被覆のプリム多様体になるということも示す計画であったが,これについてはまだ完全には示すことができていない.
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Strategy for Future Research Activity |
計画では令和5年度以降は代数曲線の2重被覆のみでなく,より一般の分岐被覆に対するプリム多様体を扱う予定であったが,2重被覆に関しての研究がまだ未完成であるため,当面は2重被覆に関する研究も継続する.偏極アーベル多様体のなかでのプリム多様体の特徴づけに関する研究においては,指標付きテータ関数を超楕円曲線の2重被覆の双対性を用いて記述することにより,新しい知見が得られるのではないかと期待して研究を進める. その後,プリム写像の単射性の問題も含めて,一般の分岐被覆にどの程度拡張することができるのかを調べていく.
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Causes of Carryover |
令和4年度まで研究集会等がオンラインで行われることが多かったため、出張旅費の使用が予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。 令和5年度は、授業代行のためバイアウト経費を使用する。
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