2020 Fiscal Year Research-status Report
Arithmetic study on automorphic forms of several variables
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20K03547
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Research Institution | Yamato University |
Principal Investigator |
長岡 昇勇 大和大学, 理工学部, 教授 (20164402)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 整数論 / モジュラー形式 / アイゼンシュタイン級数 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究成果として、「アイゼンシュタイン級数の留数の決定」が挙げあられる。すでに前回採択の研究の成果として得られ、論文として公表されている、アイゼンシュタイン級数の留数に関する志村氏の研究結果の細密化の仕事を発展させ、アイゼンシュタイン級数の留数として、どのような関数が現れるかを研究し成果を得た。具体的に述べると、Kaufholdは重さがゼロで次数が2の場合のアイゼンシュタイン級数を研究し、それが持つ「極」の存在する可能域について言明し、一部結果を得ていた。しかしながら、そこでの留数(この場合「留数関数」とよぶべきもの)について、具体的な明示公式を与えることはしなかった。これは、それを表示する道具(数学的対象物)が開発されていなかったことによる。アイゼンシュタイン級数の理論はその後、ラングランズやその他の保型形式の研究者により、より高い位置から研究された。とくに志村氏は彼の論文「On Eisenstein series」において、チューブ領域と呼ばれる保型形式が定義できるような一般的領域上のアイゼンシュタイン級数に対して、解析的性質を明らかにした。その「道具」となるのが、一般化された合流型超幾何関数とジーゲル級数と呼ばれる特異級数であった。当該研究期間の研究成果は、この「道具」を用いて、Kaufholdが可能性を予想した極において、実際1位の極が存在することを証明し、そこでの「留数関数」を志村氏の研究した、一般化された合流型超幾何関数を用いて、表示できることを示したことが、そのひとつである。この成果は、意外にも数理物理学者(ブラックホールの数学的研究者)の興味を惹いていいる。またNiemeier格子にたいするテータ級数についても成果を得、論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初めの期間においては、アイゼンシュタイン級数の留数計算が進展しなかったが、志村氏の論文を参考に研究を進めるうちに、一般化された合流型超幾何関数に関する水本氏や春木氏による、後発ではあるが詳細な研究が存在することがわかり、進展させることができた。この事実を知るまでは、一向に計算が収束しなかったが、共同研究者(ドイツ、マンハイム大学のS.Boecherer教授)の意見を聞く機会を得て、成果を得るきっかけとなった。また得られた結果を検討すると、報告者が以前研究した「次数2、重さ2のアイゼンシュタイン級数」の結果と関連があることがわかり、これからの研究の足掛かりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で述べたKaufholdの研究は古典的かつ次数が2という現在からみると特殊なものであるが、この研究の一般化を目指した志村氏の研究(論文「On Eisenstein series」に集大成としてまとめられている)のきっかけとなったものである。この期間に得られた結果を振り返ってみると、数理物理学者が興味を持った「非解析的な保型形式」がモチーフにある。彼ら(数理物理学者)は、非解析的アイゼンシュタイン級数の留数関数に興味をもち、実例を探していたことが当該研究のモチーフとなった。報告者は、その具体例の計算を行ったわけであるが、得られた結果を検討してみると、報告者が以前研究した次数2、重さ2のアイゼンシュタイン級数に関連があることがわかり、その「関連」について研究を進めていく予定である。具体的に述べると、今回得られた「留数関数」のフーリエ係数には、整数論的定数、例えばオイラーの定数やデデキントのエータ関数の特殊値が現れているが、それと同様のものが報告者が以前研究した「次数2、重さ2のアイゼンシュタイン級数」のフーリエ係数に現れていることを発見した。共同研究者のドイツ、Boecherer氏の意見によれば、モジュラー形式の微分作用素の理論で知られているマース微分作用素と関連があるのではないかということで、この事実の解明はこれからの研究目標の一つである。また今回の成果は、次数が2、重さが0のアイゼンシュタイン級数の留数に関する結果であるが、この事実を一般の「次数」で研究していきたい。
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Causes of Carryover |
これまでの研究において、ドイツ、マンハイム大学のBoecherer教授ならびアーヘン工科大学Krieg教授と研究連絡をするため、ドイツを訪問し、研究情報の交換ならびに講演等を行ってきたが、コロナの蔓延のためドイツ渡航ができなかったため。
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