2021 Fiscal Year Research-status Report
Arithmetic study on automorphic forms of several variables
Project/Area Number |
20K03547
|
Research Institution | Yamato University |
Principal Investigator |
長岡 昇勇 大和大学, 理工学部, 教授 (20164402)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 整数論 / モジュラー形式 / アイゼンシュタイン級数 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究において、懸案だった問題が解決でき、研究の進展があった。報告者の研究主題は、「多変数保型形式の整数論的研究」であり、とくに多変数モジュラー形式のp進的性質やpを法とした性質を調べてきた。以前の研究において、報告者は菊田俊幸氏と共同でSiegel-Eisenstein級数と呼ばれているSiegel modular形式について、その適当なp進極限をとると、genus theta級数という別のmodular形式になる、という事実を発見し、報告した。(2008年、Acta Arithmetica)。しかしながら、この奇妙な事実の証明は「2次のSiegel modular形式において」という、言わば「制限付き」の証明であった。「次数に関する制限なし」に成立することが予想されたが、その後の研究の進展はなかった。例外は、大熊悟氏の修士論文(2007年近畿大学)で、大熊氏は、「3次の場合」に、上記の予想が成立している例が豊富にあることを、計算機を使用し、確かめた。今回の成果は、この「予想」に最終的な証明を与えたことにある。証明は、桂田英典氏(北海道大学、室蘭工業大学)と共同で行われた。具体的に述べれば、Siegel-Eisenstein級数のFourier係数のp進極限と、genus theta級数のFourier係数を比較し、一致することを確かめることにより実行された。このgenus theta級数のFourier係数は、2次形式論の局所密度という対象が現れ、実際その計算が証明の鍵となるものであるが、2次形式の研究者である桂田氏との共同研究により、計算に成功し、証明が完成した。 この成果の他に、四元数modular形式と呼ばれている多変数modular形式のp進的性質の解明にも成果があった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
10年来の研究の懸案としてきた課題について、一応の決着(「予想」の証明を与えた)をみた。2008年に報告した研究成果として、Siegel-Eisenstein級数と呼ばれるSiegel modualr形式の典型例に対して、そのp進的な性質、ここではp進極限をとると、別の種類のmodular形式が現れるという「現象」が存在することの発見があった。しかしながら、この現象が、「2次のSiegel modular形式」に特有の現象であるか、または「一般の次数のSiegel modular形式」について成り立つ事実なのかは不明であった。この期の研究において、一般の次数について成立する現象であることが確かめられたことは、成果の一つである。その他、四元数modular形式についても、興味深い「p進的性質」が発見され、この点でも研究が進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
この期の研究成果として挙げた、Siegel-Eisenstein級数のp進極限とあるgenus theta級数が一致するという奇妙な現象の完全証明についてであるが、いくつかの「応用」も見出されている。Siegel-Eisenstein級数のp進極限を考えた過程で、そのp進的な「n次近似」が考察されている。これは、Siegel-Eisenstein級数を「mod pべき」で考えているということであり、上記「応用」とは、報告者がこれまで研究してきた、mod pのテータ作用素核に含まれるmodular形式の具体的構成が挙げられる。具体的には、これまでテータ作用素の mod p核に含まれるmodular形式については、調べられてきたが、「mod pべき」の核に含まれるmodular形式の構成には至っていなかった。上記の成果の応用として、Siegel-Eisenstein級数を用いて、テータ作用素の mod p^2核の元が構成できた。この事実の一般化が次の研究目標である。
|
Causes of Carryover |
当初、海外の共同研究者(ドイツ、アーヘン工科大学A.Krieg教授、マンハイム大学S.Boecherer教授)と研究連絡を行う予定であったが、感染症問題で渡航できなかった。 状況が変われば、渡航し、直接研究連絡をとりたい。
|