2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03555
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
梶原 健 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (00250663)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 対数構造 / 退化多様体 / アーベル多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アーベル多様体のモジュライ空間において、適切な退化対象を対数幾何学のなかに見い出し、対数アーベル多様体論を構築して、この方面の研究に応用することを目指している。対数アーベル多様体に関する本研究は、加藤和也氏(シカゴ大学、米国)、中山能力氏(一橋大学)との共同研究である。 本年度は、対数代数空間の理論に関して研究し、対数代数空間の判定条件をより簡素化することができた。以下のモジュライ空間の構成にも応用した。 偏極、自己準同型環、およびレベル構造を考慮した、いわゆるPEL型の対数アーベル多様体のモジュライ空間を自然なモジュライ関手として定式化し、対数代数空間による表現可能性を研究した。モジュライ空間の定義において、主偏極対数アーベル多様体のモジュライ空間と同様に、完備な扇を指定する場合、しない場合の両方を研究し、この空間は、固有かつ対数的なめらかな対数代数空間で表現されることがわかった。扇を指定しない標準的なモジュライ空間の定義と構成は、従来の幾何学の範疇を超えた、対数幾何学における応用として重要である。 また先行研究にみられるトロイダルコンパクト化も、同様に完備な扇を指定して得られるが、本研究の特筆すべき点は、モジュライ関手を表現する空間として構成した点である。この構成には上述の対数代数空間の成果を利用した。 この研究成果の意義は、対数アーベル多様体のモジュライ空間と同様、対数幾何学の枠組みのなかで、対数アーベル多様体が退化アーベル多様体として、従来にない、群構造をもつアーベル多様体の退化をとらえることに成功した点である。この点は目覚ましい成果と考えられる。また PEL 構造を考慮したモジュライ空間において、対数アーベル多様体の群構造のおかげで、より自然な定式化を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,対数アーベル多様体を自己準同型も考慮したモジュライ空間の構成が進展し,おおむね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
モジュライ空間の構成とともに,複素数体上での解析的な理論についても研究を進める.
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