2023 Fiscal Year Research-status Report
スタンレー・ライスナー環とエールハルト環の理論の発展的統合
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20K03556
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
宮崎 充弘 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90219767)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エールハルト環 / スタンレー・ライスナー環 / 日比環 / 順序凸多面体 / 鎖凸多面体 / ステーブルセット多面体 / トーリックフェイス環 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、数学的対象に対しては、二つの主たる操作がある。部分対象を考えることと、剰余対象を考えることである。多項式環に対する、これら操作の中で、とくにmonomialの有限集合によるこれら二つの操作を行って得られる可換環は、組み合わせ論とも結びつき、可換環論における重要な研究対象である。 単体複体から定義されるスタンレー・ライスナー環は、多項式環のsquare-freeなmonomial idealによる剰余環として定義される。また、有理凸多面体から定義されるエールハルト環は、有限個のmonomialで生成される、多項式環の部分環である。一方で、スタンレー・ライスナー環は、各facetに対して多項式環が対応し、それらを、スタンレー・ライスナー環を定義する単体複体の幾何学的構造によってつなぎ合わせたものになっている。多項式環は、正規化体積1の単体のエールハルト環であることに着目すれば、単体複体を一般化した、有理凸多面体からなる多面体複体に対しても、その各facetのエールハルト環を、多面体複体の幾何学的構造によってつなぎ合わせて得られる可換環を考えることができる。このようにして得られたものは、トーリックフェイス環と呼ばれている。 私は、日比環のFrobenius complexityに関する研究において、日比環のanti-canonical idealのfiber coneを考えたが、その際、日比環のcanonical idealおよびanti-canonical icealのfiber coneはトーリックフェイス環の構造をもつことを示し、トーリックフェイス環が、実際の研究場面で現れることを示した。 令和5年度には、日比環からこのようにして現れるトーリックフェイス環を研究し、様々な性質をもつものが現れることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画においては、スタンレー・ライスナー環や、エールハルト環の専門家とお会いして、いろいろな議論をする中で、日比環から現れたトーリックフェイス環をはじめ、様々なトーリックフェイス環について、様々な角度から考察し、新しい視点・観点などから研究していくという手法を予定していた。しかし、本研究が始まった令和2年度から、新型コロナウイルス対策の移動の制限が実施され、当初の計画通りには進まなかった。令和5年5月8日に、新型コロナウイルスの分類が、5類になり、移動制限は解除されたが、それまでの遅れを取り戻すには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、研究期間の延長を認めていただいたので、これまでの研究をさらに発展させ、目標としている、エールハルト環とスタンレー・ライスナー環の理論の発展的統合に至る道を探っていきたいと考えている。とくに、この研究を発想せしめた、日比環のcanonical ideal、anti-canonical idealのfiber coneとして現れるトーリックフェイス環を中心に研究し、それらの環の様々な可換環論的性質や、トーリックフェイス環をを定義する多面体複体の組み合わせ論的性質などを、それらを定義した日比環や、その日比環を定義する順序集合などとの関連がどのようになっているかなどを中心に、様々な方向から調べようと考えている。 トーリックフェイス環は、有理凸多面体からなる、任意の多面体複体から作ることができるが、他の数学的対象、この場合は日比環であるが、から自然に導出されるトーリックフェイス環は、どのようなものに限られるか、また、その性質、とくに次元、depthなどには、どのような制限がかかるのか、などについて明らかにしようと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究においては、スタンレー・ライスナー環やエールハルト環の専門家とお会いして、組み合わせ的可換環論を中心に、いろいろな議論をする中で、新しい知見・観点などから、日比環から現れたトーリックフェイス環など、様々なトーリックフェイス環について、考察し研究していくという手法を予定していた。しかし、本研究が始まった令和2年度から、新型コロナウイルス対策の移動の制限が実施されたため、当初の予定通りの研究は全くできなくなってしまった。今回、研究期間の延長が認められたため、令和6年度において、遅れている研究を行う計画である。
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