2020 Fiscal Year Research-status Report
Quantum Interaction and number, representation theory, discrete dynamics
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20K03560
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
若山 正人 東京理科大学, 理学部第一部数学科, 教授 (40201149)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非可換調和振動子 / 量子ラビ模型 / 非対称量子ラビ模型 / スペクトルゼータ関数 / アペリ数類似 / 保型形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
非可換調和振動子のスペクトルゼータ関数ζQ(s)の特殊値から得られるアペリ数類似の高次の合同性を導いた。ただし全貌は未だ明らかでない。ただし、興味深い数列が次々と生まれてくることが明確になったことは、今後の研究の意義に繋がるものと考えられる。また、s=4のときに得られるそれらの母関数が保型積分(Eichler 積分)の僅かな拡張で記述されることやその導出の際に慨正則保型形式の具体例でもある一般Eisenstein 級数の微分が関与することなどを示した。(多変数の)概正則保型形式は、近年、改めて重要視され、深い研究が進んでいるテーマである。特殊値 sの値がより大きい偶数値をとると、このような概正則保型形式がさらに多く現れてくることが十分に期待され、非可換調和振動子の数論的研究の意義がより明確になってきている。さらに、当該母関数のさらなる母関数が 一般化されたMahler 測度で記述され、それらが、群の力学系に深く繋がる様子を観察した。実際にそれは、有限群から構成されるケーリーグラフの重みがついた一般化に加え、ある種の帰納的極限をとった無限群に拡張することと関係しているように見える。一方で、量子ラビ模型のプロパゲーターの計算を完成させそこからスペクトルゼータの解析を始めることができた。じっさい、負の整数点における積分表示から、ベルヌイ多項式の一般化(Rabi-Bernoulli と名付けた)を定義してその性質を調べるところに至っているが、今後の研究推進が必要である。また、量子ラビ模型の非可換版というものが、一群の物理学者の関心を集めているが、その隠れた対称性についても研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非可換調和振動子の数論的研究において、上述したところまでをまとめた論文が次のように受理された。K. Kimoto and M. Wakayama: Apery-like numbers for non-commutative harmonic oscillators and automorphic integrals, Annals de l’Institut Henri Poincare- D, (Accepted 2020), - arXiv:1905.01775 [math.NT] [math-ph][53pages]
さらに、量子ラビ模型のプロパゲータを完全に計算し、 Cid Reyes-Bustos and Masato Wakayama:Heat kernel for the quantum Rabi model: II. Propagators and spectral determinants, J. Phys. A: Math. Theor. 54 115202 が出版できた(物理系のジャーナルのため、投稿から出版までの時間がやや早かった。)。ただし、ここではスペクトルゼータの全平面への解析接続と負の整数点における値の積分表示にとどまっている。したがって、非可換調和振動子における数論研究の程度にはまったく至っておらず、端緒についたところである。そうしたことから、おおむね順調に進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ラビ模型のスペクトルゼータ関数の特殊値研究を、非可換量子ラビ模型も含め東京工業大の Cid Reyes-Bustos と進める。後者のモデルに関しては、隠れた対称性の構造の理解が物理学者を中心に大きな関心を持って研究が進められている。すでに本研究代表者は、そこには数論的に深い考察が不可欠なことを見出している(超楕円曲線の数理や代数曲面の数理)。これをさらに進める。また、非可換調和振動子の数論研究を離散力学系の観点から深める。引き続き、琉球大学の木本一史との共同研究を推進したい。また、Cocvid-19の収束後となるが、国内外の研究者との意見・情報交換を推進することで、課題をよりよく理解して解決に向かうための活動を進める。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定されていたフランス・ナンシーでの国際会議が1年延長されたが、その延長(2021年2月を計画)も Covid-19 のため実現できなかった。予定では、この会議で講演を行い、その前後に MPIのDaniel Braak を訪問し、意見交換をする予定であったが、やはり実現できなかった。12月に沖縄で開催する予定のゼータ関数のシンポジウムに、Anton eitmer (チュービンゲン大学) を招聘、また、東京(東京理科大学)においてもセミナーでの講演を依頼する。2022年2月にヨーロッパ出張(MPI, Paris Sorbonne 大(Jacque Faraut), Bologna 大(Alberto parmeggiani))を共同研究のために訪問する。
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Research Products
(6 results)