2020 Fiscal Year Research-status Report
Interactions between toric varieties and convex polytopes
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20K03562
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
川口 良 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10573694)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / 偏極多様体 / 断面幾何種数 / トーリック多様体 / Weierstrass半群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要課題は, 「1. トーリック型の巡回型Weierstrass半群の特徴付け」と「2. Castelnuovo(トーリック)多様体と多面体の関係性の究明」であり, それぞれについて今年度は以下のような成果があった. 課題1に関して. 筆者は以前の研究で, 素数次数の場合に数値的な必要十分条件を与えたが, 今年度はこれを10以下の偶数次数にまで拡張した結果を論文にまとめ, 雑誌に投稿した. この問題ではまず, Weierstrass半群H(P)に対応する多角形が台形になるための数値的条件を得ることが出発点となる. 以前は素数次に限定して考えていたこの条件を4以上の任意の自然数にまで拡張することで, 今回の論文では4,6,8,10次のトーリック型のWeierstrass半群について, 巡回型になるための数値的必要十分条件を与えた. 課題2に関して. h^0(L+K_X)≧1の(=対応する多面体P(L)が内点を持つ)とき, 偏極多様体(X,L)がCastelnuovo多様体であることとP(L)の体積が下限に等しいことの同値性を証明した論文がJ. Algebraic Combin. に掲載されることが決定した. さらに, その後続研究としてh^0(L+K_X)=0の場合について考察した. まず, n次元偏極多様体(X,L)に対してCastelnuovo多様体を定義する際には, Lの次数がh^0(L)-n-1の何倍になっているかを表す値mが導入される. 一般的にはmはn-1以上となることが多く, mが小さいほど特殊なケースであると考えてよい. 今年度はh^0(L+K_X)=0の場合, (X,L)がCastelnuovo多様体ならばmはn-1以下となることを証明し, さらにm=n-1の場合にはCastelnuovo多様体となるための必要十分条件を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの課題で成果が上がっており, 課題1(「研究実績の概要」参照)は論文の投稿に至り, 課題2は論文が雑誌に掲載されたので, 研究はおおむね順調に進んでいると言える. Weierstrass半群の研究においては, 今回の研究で巡回性の必要十分条件が得られたのは10以下の偶数次の場合であるが, 半群H(P)に対応する多角形が台形になるための条件は任意の自然数(≧4)の次数で得られた. 当然その数値的条件が, 一般の場合にも巡回性の必要十分条件となることが期待されるため, 今後の研究に向けて大きな弾みがついたと言える. Castelnuovo多様体の研究においては, h^0(L+K_X)≧1やh^0(L+K_X)=0でm=n-1のような, いわゆる”ありふれた状況”については結論が出て, 特殊なケースが残された状態になった. これらは多面体の言葉で言えば, 2倍や3倍に拡大しても内点を持たない多面体であり, 極端に細長いような特殊形状になっていることを意味する. このような多面体は体積や内点の数の挙動が複雑で, 一般的な多面体論でもあまり研究が進んでいない分野であり, こうしたケースが最後に残ったのは必然とも言える.
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Strategy for Future Research Activity |
一般の次数を持つトーリック型Weierstrass半群の巡回性については, これまでの研究から, 対応する多角形が台形になることと同値であることが強く示唆される. 台形であるための数値的条件はすでに得られているので, あとはこれらの条件と巡回性との関係を精査すればよい. 研究に当たっては, これまでと同様に神奈川工科大の米田氏と協力しながら進めていく予定である. 一昨年度まではお互いに行き来しながら研究打ち合わせをしていたが, 新型コロナウイルス流行の影響でそれが難しくなったため, 昨年度からはオンラインのミーティングソフトを活用しながら打ち合わせをしている. Castelnuovo多様体の研究で残された特殊ケースについては, 多面体論の方で先行の成果が少ない現状を考えれば, 難航することが予想される. そこで, 必要十分条件を求める前に, まずは具体例を見つけることを優先する方がよいと考えている. 3次元や4次元であれば特殊な多面体でも扱いやすいので, それらを参考に一般次元でh^0(L+K_X)=0かつm≦n-2となるCastelnuovoトーリック多様体の具体例を構成することで, 新たな結果につながるのではないかと考えている. この作業は, コンピュータを用いた多面体の解析に詳しいKU LeuvenのW. Castryck氏にも協力をお願いする予定である.
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