2022 Fiscal Year Research-status Report
Zeta functions for Kaehler magnetic fields
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20K03581
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
足立 俊明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60191855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ケーラー磁場 / 佐々木磁場 / A型実超曲面 / 複素空間形 / 正規ケーラーグラフ / 直積ケーラーグラフ / 確率的隣接作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主として複素空間形内のA型実超曲面を対象として考察の更なる展開の準備を行った。ケーラー多様体の実超曲面には、超曲面の単位法ベクトル場とケーラー多様体の複素構造とを使って概接触計量構造が誘導される。複素構造の平行性から接触構造に対応した磁場が与えられる。研究者は、複素構造が重要な役割を果たしていることからこれを佐々木磁場と命名した。ケーラー磁場の軌道と佐々木磁場の軌道の方程式はかなり類似しているが、ケーラー磁場が一様磁場であるのに対して佐々木磁場は構造ベクトル場と速度ベクトルとの成す角により磁力が異なるという性質がありかなり違いがある。今年度は、複素空間形内の代表的なA型実超曲面という等質空間を取り上げ、その佐々木磁場の軌道と複素空間形のケーラー磁場の軌道との関係を考察した。佐々木磁場の軌道を複素空間形の曲線としてみたときにケーラー磁場の軌道に見える条件を求め、1つのケーラー磁場の軌道に対してどの程度の佐々木磁場の軌道の合同類集合が対応しているかを調べた。特に複素双曲空間の非有界で無限遠点を2つ持つ軌道は佐々木磁場の軌道としては実現できないことが分かった。 一方、ケーラー多様体の離散モデルである2つの辺構造を持つケーラーグラフの中で特に複素空間形に対応するような等質性を持つ物として、正則でありかつ主辺による隣接作用素と補助辺による隣接作用素とが可換になる正規ケーラーグラフを前年度までの研究で挙げ井原型ゼータ関数を考察したが、非等質な場合を考察するために等質な物との比較という方法を模索した。この目的のために正規ケーラーグラフを豊富に構築する必要が有り、グラフの直積という操作を利用して作成することにした。まず主グラフと呼ばれる多様体に対応する物はデカルト積という古典的な物とし、磁場を構成する補助グラフをいろいろ提案し、確率的隣接作用素の固有値を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症の影響が引き続き、国際研究集会での中間発表を行うことができなかった影響を大きく受けている。これは、当初予定していた集会は対面のみのため中止になり、オンラインで行われた類似の集会もあったが、欧米との時差の関係で深夜の時間帯に職場から参加する必要が生じこれを断念した結果である。発表だけではなくこの機会を利用して参加者から情報収集を試みる予定であったが行えず、代数的な側面からの考察については大きく遅れている。また、今年度の大部分の期間で行われた中国の零コロナ政策の影響を受けて事実上入国できなかったことから、石青松講師(貴州大学)との佐々木磁場に関する研究は毎週 zoom を利用して打ち合わせを行って進めたが、同氏が罹患したこともあり前年度までの遅れを取り戻すほどスピードアップすることはできなかった。 一方、正規ケーラーグラフの構築面では、補助グラフとして6種類を提示することで予定通りの考察を行うことができた。また等質実超曲面上の佐々木磁場の軌道に関する考察では、超曲面上の軌道を複素空間形で見てどのような曲線になっているかという立場だけではなく、複素空間形の曲線がどの程度軌道で表現できるかという逆の立場を考えるに至り、この方面での考察の新しい展開の起点を得ることができた。このような考察は当初予定していなかったことであり、この面では予定より進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ようやくコロナ禍も終息期を見せ始め対面の研究集会も開かれるようになってきた。今年度はまず、これまで延期を余儀なくされてきた国際研究集会で、これまでの研究期間の成果を発表して批判を受けることで、新たな考察の方向性をつかみたいと考えている。 具体的に述べると、ケーラーグラフのゼータ関数について、正規性を仮定することで井原型関数と確率的隣接作用素との関係を調べることができ当初の計画をほぼ達成しているが、正規性を持たないケーラーグラフの考察も視野に入れる必要があると考えている。通常グラフでは正則ではないグラフに対しても考察されているので自然な問題ではあるが、ケーラーグラフでは正規性を仮定しないと確率的隣接作用素が非対称になることから状況が異なることも考えられる。成果の中間発表時に参考意見を得られる可能性もあるが、正則ではないが主グラフと補助グラフの隣接作用素が可換になる具体例をいくつか見つけ出して、次数の影響がどのように反映しているか調べることを考えている。そもそもこのようなケーラーグラフの存在性も重要な研究課題となっている。 連続モデルについては、今年度超曲面上の佐々木磁場の軌道が複素空間形のケーラー磁場とどのように関係するかを調べたことの逆問題を考えることにする。例えばユークリッド空間内の円はある球面の測地線として一意的に表現できるという自明な性質があるが、複素射影空間や複素双曲空間に対して類似する性質が成り立つかを、本年度の結果を踏まえながら考察を進めたい。ルジャンドル軌道に関する共同研究を行っている石青松講師(貴州大学)も代表者が参加予定の国際研究集会に参加予定であることから対面で討議できる機会が得られるので、この機会を利用して研究の進展を図る予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響が続き、計画していた国際研究集会が延期になったことと、中国の外国人の入国制限により石青松講師(貴州大学)との対面による共同研究が実施できなかったこと、更に国内研究集会も多くが引き続きオンライン開催または対面とのハイブリッド形式になったことによる旅費使用が計画より大幅に減ったことが原因である。 中国の入国制限は若干緩和されたとはいえ短期でもビザ発給が必要になっておりそれなりの障害があるが、ヨーロッパにおける国際研究集会に代表者のみならず中国の研究者も参加できるようになったことから、国際研究集会での成果の中間発表を行うと共にその機会を通して共同研究者との対面での討議を行うこととしたい。このため研究集会に単に参加するだけではなく期間の前後に討議の時間を設けることを行う。これで3年間の計画が一気に取り戻せるとは考えていないが、オンラインでの討議だけではどうしてももどかしさが残った部分を解消できると期待しており、この討議が今後のオンラインでの考察にも好影響を与えると考えている。
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Research Products
(4 results)