2022 Fiscal Year Research-status Report
Construction and uniqueness of asymptotically symmetric Einstein spaces
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20K03584
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 佳彦 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00710625)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 微分幾何学 / リーマン幾何学 / アインシュタイン方程式 / 漸近的対称空間 / 共形幾何学 / CR幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、漸近的対称アインシュタイン空間の存在・一意性の研究に新たな展開をもたらすことである。漸近的対称アインシュタイン空間とは「境界バルク対応」の数学的定式化を与える非コンパクトな完備リーマン多様体であって、その性質は一般に、空間の無限遠境界の幾何学(共形幾何学やCR幾何学など)と密接な関係をもっていると考えられる。 この種の無限遠境界の幾何学は、一般に、1920年代のエリー・カルタンによる研究に始まる放物幾何の理論によって捉えられる。しかし漸近的対称アインシュタイン空間と放物幾何(とくに正規化条件とよばれる条件をみたす放物幾何)の関係をよく理解することは、限定的にしか達成されておらず、まだ重要な課題として残っている。 2022年度は、前年度に調査した「CRキリング作用素」の放物幾何の理論の枠組みにおける位置づけに関して論文を執筆し、あわせてこれに関する口頭での研究報告を何度か行った。またその際に関連研究者から得た情報に基づき、共形測地線とよばれる特別な曲線群とAHアインシュタイン空間の関係について考察し、両者が繰り込みエネルギーの概念を通じて関連づけられることを見出した(論文は準備中)。ACH空間におけるリッチフローの研究に関する共同研究者との議論にも多少の進展があった。 さらに従来と同様、共形幾何学やCR幾何学、非コンパクト空間における幾何解析、ならびに関連するさまざまな問題に関して広く理解を深めることも引き続き行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度と比べるとオンラインではなく現地で開催される研究集会が増加した。そのいくつかに実際に参加して、あらためて対面で行われる人的交流の重要性を実感したところである。前述のとおり、その中で得られたアイデアに基づいて一定の研究成果をあげることができた。 本研究の開始当初に掲げた具体的な問題に関しては課題も残るが、その一方で当初は想定していなかった成果も得られている。全体の状況を勘案して、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、オンライン開催、現地開催の両方の研究集会等をうまく活用し、また共同研究者との打ち合わせも積極的に行いながら、大きな視座に基づくよい具体的な問題の発掘と実際の問題解決の両方につとめたい。
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Causes of Carryover |
2020年度・2021年度に当初の計画で予定していた出張がほとんど行えなかったのが理由である。研究期間を2024年度まで延長することにより使用する。
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