グラフの対称性を実現する空間埋め込みのトポロジー

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K03597
• Research Institution: Kindai University
• Principal Investigator: 池田 徹 近畿大学, 理工学部, 教授 (00325408)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 空間グラフ / 対称性 / ３次元多様体 / デーン手術

Outline of Annual Research Achievements

本研究課題は，抽象グラフの対称性と３次元球面への空間埋め込みとの関係を，デーン手術等の３次元トポロジーの理論によって調べることを目標としている。令和３年度は，３次元多様体上の有限群作用の枠付き絡み目による記述の研究について取り組んだ。
３次元多様体は３次元球面からデーン手術で得られることが知られている。その発展として，３次元多様体の対称性について，デーン手術を記述する枠付き絡み目の対称性からの誘導可能性の問題が提起されている。本研究課題では，３次元多様体上の向きを反転する滑らかな周期写像に対して，特定条件下での肯定的解決を目標とした。令和２年度の研究において全体的な議論の方向性を確立したが，令和３年度は細部の精密化の研究を行った。
３次元多様体上の向きを反転する周期写像で生成される有限群作用の特異集合は，向きを保つ部分群作用による絡み目と，向きを反転する部分群作用による曲面および孤立点からなることが知られている。特異集合を簡略化するために，従来法の応用理論を確立して絡み目を解消し，同変デーン手術により曲面の圧縮を実現した。これらの同変デーン手術は整数手術では困難であるが，半整数手術まで含めれば可能になる点を精密に証明した。また，３次元球面，２次元球面上の円周束，３次元トーラスにおける対称性のモデルとして，向きを反転する滑らかな周期写像を具体的に定め，３次元多様体の対称性がこれらのモデルで記述できることを厳密に示した。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

３次元多様体の対称性と枠つき絡み目の対称性との関係に関する研究は，令和２年度に重点的に取り組んだテーマであった。しかし，議論が不十分な箇所が見つかり，修正の必要性が生じたため，令和３年度に追加の研究を行うこととなった。全体的な議論の方向性に大きな変更を伴うことなく，技術面での修正は概ね修了した。令和４年度には学術論文として完成させ，学術誌へ投稿する見込みである。しかし，当初計画された論文投稿の時期から，やや遅れが生じた。これらの進捗状況から，「やや遅れている」と判断した。

Strategy for Future Research Activity

特定条件下の抽象グラフの対称性は空間埋め込みによって実現可能であることを既に示したが，今後は抽象グラフの対称性とそれを実現する空間グラフの外部空間の幾何構造の関係について特徴づけを行う。また，３次元多様体の対称性と枠つき絡み目の対称性との関係に関する研究は，令和３年度の研究成果を学術論文にまとめ，学術雑誌へ投稿し公表する。

Causes of Carryover

新型コロナウイルスの蔓延により，研究集会や学外のセミナーが中止あるいはオンライン実施された。このため，計画どおりの旅費使用がかなわなかった。次年度使用額は，オンライン環境整備のためのIT機器の購入や旅費に使用する。