2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K03602
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 亮吉 東北大学, 理学研究科, 助教 (80629759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 双曲群 / 擬等長 / 剛性問題 / 測地流 / ハウスドルフ次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
幾何学的群論において有限生成群の幾何構造を反映した距離の擬等長類を考察することは基本的である。一方で擬等長類の同一視の下では、例えば双曲曲面の変形などは捉えることはできない。2つの距離が擬等長的であることを強めて擬相似的であるか否かの判定問題の研究を行っている。本年度は(非初等的)双曲群において2つの語距離がいつ擬相似になるかという問題について平均歪度という量を(関連する先行研究に基づいて)導入することで、その必要十分条件を得ることができた。より正確には平均歪度とは2つの語距離の片方の距離による(巨大な)円周がもう片方の距離でその何倍の半径の円周に近いかを考えることで定義される(その比例定数のことを指している)。任意の2つの語距離は(単に)擬等長なので、円周上すべての点に対して一様に適用されるそのような比例定数というものは一般に存在しない。ここでは、片方の距離の円周上の一様分布について測度が集中するという意味で、比例定数を考えている(よって、「平均」歪度とよんでいる)。この比例定数とそれぞれの語距離の指数体積増大度の比との間には(カウンティングによる簡明な)不等式で表される関係がある。その不等式の等号成立条件が2つの語距離が擬相似であることの必要十分条件である。 これが主定理である。より一般に語距離に対してのみではなく例えば双曲群が双曲空間型に幾何学的に作用する場合にも適用することができる。証明には一般化された測地流の枠組みで最大エントロピー(ここではエントロピーは直接定義できないのでハウスドルフ次元を考える)測度の一意性を定式化しそれを確立することを経由している。この成果は雑誌論文に投稿され受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は今後の研究を進める上で必要となるであろう枠組みと道具立てを整備するような研究を行い、その成果を論文として出版するところまで漕ぎ着けることができた。よって、おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はこれまでに整備した枠組みに具体的な計算方法を与える研究を行っている。これは計算機を援用するもので、そのための準備を少しずつ進めている。(既存のパッケージのみでは当該研究が必要としている計算ができないため、専用のプログラムを用意している。)またこれまでに得られた擬相似剛性定理は他のいくつか異なる命題とも同値であることがわかってきた。そのためそれらを統合することも視野に入れて研究を進めることにした。
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Causes of Carryover |
本年度は感染症流行のため予定していた海外出張と国内出張また共同研究者の招聘などを すべて取りやめることになった。そのために計上していた予算はすべて次年度に繰り越すことにした。これらの次年度での使用計画は本年度実行できなかった活動を行うために当てられるものである。
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Research Products
(3 results)