2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K03602
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 亮吉 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80629759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 離散群論 / 双曲曲面 |
Outline of Annual Research Achievements |
双曲曲面への重み付き有限グラフの配置からエネルギーの意味で最適な双曲計量を決定する問題を考察した。これは広い意味で平面グラフのトポロジーから曲面の幾何構造を決めるという、すでに知られている離散一意化定理(ケーべ・アンデレエフ・サーストン)のヴァリエーションである。我々は実際に適切な条件のもとで、グラフの埋め込みのディリクレエネルギーと双曲計量を組みにしてその値を最小化するようなものの存在と一意性を示すことが出来た。また曲面への有限群の作用を利用していくつかの具体例を構成することができた。この方法は写像類群におけるニールセンの実現問題の別証明を与える。一方、以下のような問題が残っている。双曲曲面と有限グラフを決めてそこへの最小エネルギーが与えられた値以下であるようなトポロジカルに異なる(フィリング条件を満たす)埋め込みの個数をカウントする問題、また任意に与えられた双曲曲面が我々の意味で適切なグラフの埋め込みによるエネルギー最小なものとして与えられるか、という問題である。これらは自然なものであり興味深いが、未解決である。今後の重要な課題である。一方この研究で双曲曲面の計量の変形についての解析を曲面群の2つの距離の間の平均歪み度の研究に組み込んで行っていくことを考えている。より正確には平均歪み度の具体的な計算ができるだろうか、という問題に興味がある。現在そのための予備的な数値実験を行っている。これからこの方向を押し進めていき、力学系の問題との関連を意識して具体例の計算を行っていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双曲曲面への重み付き有限グラフの埋め込み問題についての研究成果を具体的な結果として出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
双曲曲面の研究は曲面群において平均歪み度の計算を行う上で(特に具体例の計算に)役に立ちそうだということがわかってきた。この方向について関連して行っている研究とともに押し進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が未だ収まらず、依然としてほとんどの研究集会がオンラインであり、また研究打ち合わせもオンラインで行っていたため、情報収集・研究打ち合わせのための旅費として計上していた経費が手付かずに残ったためである。これは次年度に(可能ならば)使用する予定である。
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